リラックス法学部 > 初学者の部屋 > 時効(取得時効・消滅時効)について解説
時効とは、時の経過により権利を取得したり、
失ったりする制度です。
権利を取得するものを「取得時効」
権利が消滅するものを「消滅時効」
といいます。
いずれも一定期間、
一定の事実状態が継続することにより、
権利を取得したり、
権利が消滅したりするものですが、
この「一定の事実状態」を崩し、
時効期間をリセットするものがあります。
それを「時効の中断」といいますが、
今回はそれについて説明していきます。
民法の147条にこの時効の
中断事由についての規定があります。
(時効の中断事由)
第百四十七条 時効は、次に掲げる事由によって中断する。
一 請求
二 差押え、仮差押え又は仮処分
三 承認
なお、これらの事由で時効が中断しても、
時効はまた新たに進行を始めます。
(中断後の時効の進行)
第百五十七条 中断した時効は、
その中断の事由が終了した時から、
新たにその進行を始める。
2 裁判上の請求によって中断した時効は、
裁判が確定した時から、
新たにその進行を始める。
①請求
この請求は「裁判上の請求」を意味します。
取得時効、消滅時効いずれの場合も、
時効の利益を得ようとする者に対して、
権利者が裁判上、権利を主張することで、
訴えの提起の時に時効が中断します。
(今までの継続期間のカウントがリセットになる)
裁判外で請求することを
「催告」といいます。
これは時効の完成をいったんストップさせて、
その間に裁判上の請求をするための措置という扱いです。
例えば、10年で時効が完成するところ、
9年11ヶ月のところで、催告をした場合、
そこから6ヶ月間の間は時効が完成しないので、
その間に裁判上の請求をすれば時効は中断しますが、
それをしなければ時効は完成するということです。
②差押え、仮差押え又は仮処分
こちらは民事訴訟法、民事執行法、民事保全法を
学習した後にあらためて、
確認していただきたいのですが、
「差押え」という言葉は
よく耳にすると思うのですが、それです。
「仮差押え」というのは裁判をする前に、
相手に財産隠しをされないように
先手を打つことで、「差押え」は裁判に勝つ等、
確定した権利を強制的に行使するものです。
勘の鋭い方は
「それなら差押えは前提として
①の裁判上の請求で中断してるじゃないか」
とお気づきだと思いますが、
差押えは裁判で勝つ以外にも
行うことができる場合がある
と認識しておいてください。
「仮処分」はとりあえずそういう言葉があった
ということだけ覚えておいてください(笑)
③承認
こちらは、時効の利益を受ける者が、
取得時効の場合は、
自分が本来権利を持っていないこと、
消滅時効の場合は、権利があること
(自分が債務を負っていること)
を認める表示をすることです。
取得時効の場合
「ここあんたの土地じゃないでしょ?」→
「ハイ、すみません!」
消滅時効の場合
「お金いつ返してくれるんですか?」→
「もうちょっとだけ待ってもらえますか?」
というふうに権利の存在あるいは
不存在を認めた場合です。
こちらは裁判所がらみではないので、
一番簡単にできそうですね。
ICレコーダーなどで録音して、
相手が口をすべらせるのを待てば時効中断です。
ちなみに訴えを起こしても、却下、取下げの場合は
時効に中断の効力は生じませんので、ご注意ください。
(裁判上の請求)
第百四十九条 裁判上の請求は、
訴えの却下又は取下げの場合には、時効の中断の効力を生じない。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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