民法には、質権、抵当権という

約定担保権が規定されていますが、

現実の経済社会ではこの2つだけでは、

なかなか不便なところがあり、

これら以外にもさまざまな形の物的担保が

行われています。

 

こういったものを「非典型担保」といいますが、

今回は非典型担保のひとつ

譲渡担保について解説します。

 

譲渡担保とは、

債権者が債務者(または物上保証人)から

所有権などの財産権を法律形式上譲り受け、

被担保債権の弁済をもってその権利を

返還するという形式をとる担保方法です。

 

例えば、業務で使用する機械機器を担保に、

運転資金を借りるということですが、

所有権は占有改定の方法で、引き渡すので、

譲渡担保設定者は引き続き、その機械機器を使用しながら、

それを借金のカタとして融資を受けるということができます。

 

民法には、質権という約定担保権がありますが、

質権の場合は、占有の移転が効力要件で、

質権設定者の代理占有を禁じていますので、

モノを使いながら借金のカタにすることはできません。

また、抵当権は原則として

動産には設定することができません。

 

譲渡担保の方法は、

民法第94条の通謀虚偽表示にあたるのではないか?

民法第345条、民法第349条の脱法行為ではないか?

物権法定主義に反するのではないか?

という疑問も浮上するところではありますが、

 

経済社会の需要により、

譲渡担保の方法は古くから行われ、

判例によっても認められてきました。

 

譲渡担保の目的物は、

業務で使用する機械機器、販売目的の商品、

手形・小切手などの有価証券、

特許権・ゴルフ会員権・電話加入権

コンピュータ・ソフトウェアなど

さまざまなものが判例で認められています。

 

譲渡担保の法律構成

譲渡担保をいかに法的に構成するかについては、

争いがありますが、大きく分けて

所有権的構成と、担保的構成に分類されます。

 

所有権的構成

所有権的構成は、譲渡担保設定者から債権者へと

担保目的物の所有権が移転するものの、

完全に所有権が移るわけではなく、

設定者にも何らかの権能が残っていると考えるものです。

 

かつて、判例・通説は、

外部的にのみ所有権が移転する【弱い譲渡担保】、

内外ともに所有権が移転する【強い譲渡担保】に分類し、

大正13年12月24日判例では、

後者の考え方を原則としました。

 

担保的構成

担保的構成は、担保としての実質を反映させる考え方で、

設定者に何らかの物権ないし物権的地位を認めるとし、

最も徹底したものが、譲渡担保を一種の抵当権として構成する

抵当権説です。

 

譲渡担保の実行

まず、譲渡担保は、

経済社会の慣習によって生まれたものですので、

実行手続きが法律に規定されているわけではなく、

判例の積み重ねによって、

そのルールが形作られてきましたので、

必ずしも明確ではないという点があります。

 

譲渡担保の実行は、

裁判によることのない私的実行で行います。

 

債権者が目的物を取得し、

目的物の適正な価額と被担保債権の価額との

差額分を債務者に返還して清算する帰属清算型方法と、

債権者が目的物を第三者に処分して、

その代価の中から債権者が優先弁済を受け取り、

被担保債権の価額との差額分を債務者に返還して

清算する処分清算型方法があります。

 

目的物の所有権がいつ設定者から債権者に移転するか?

というところですが、

弁済期の経過後であっても、

債権者が担保権の実行を完了するまでの間は、

債権者は、債務の全額を弁済して譲渡担保権を消滅させ、

目的物の所有権を回復することができるとした判例があります。

 

 

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