団地の建て替えに際し、事業者の説明不足に対しての住民らの慰謝料請求
(平成16年11月18日最高裁)
事件番号 平成16(受)482
この裁判では、
分譲住宅の譲渡契約の譲受人が
同契約を締結するか否かの意思決定をするに当たり
価格の適否を検討する上で重要な事実につき
譲渡人において説明をしなかったことが
慰謝料請求権の発生を肯認し得る
違法行為と評価すべきかについて
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
被上告人らは,住宅公団との間で,
その設営に係る団地内の住宅につき賃貸借契約を締結していたが,
住宅公団の建て替え事業に当たって,
借家権を喪失させるなどしてこれに協力した。
住宅公団と被上告人らとの間で交わされた本件覚書中の
本件優先購入条項は,被上告人らに対するあっせん後
未分譲住宅の一般公募が直ちに行われること及び
一般公募における譲渡価格と被上告人らに対する譲渡価格が
少なくとも同等であることを前提とし,
その上で抽選によることなく被上告人らが
確実に住宅を確保することができることを約したものである。
そのため,被上告人らは,本件優先購入条項により,
本件各譲渡契約締結の時点において,
被上告人らに対するあっせん後
未分譲住宅の一般公募が直ちに行われ,
価格の面でも被上告人らに示された譲渡価格は,
その直後に行われる一般公募の際の譲渡価格と
少なくとも同等であるものと認識していた。
ところが,住宅公団は,本件各譲渡契約締結の時点において,
被上告人らに対する譲渡価格が高額に過ぎ,
仮にその価格で未分譲住宅につき一般公募を行っても
買手がつかないことを認識しており,そのため
被上告人ら及び他の建て替え団地の居住者に対するあっせん後
直ちに未分譲住宅の一般公募をする意思を有していなかった。
それにもかかわらず,住宅公団は,被上告人らに対し,
被上告人らに対するあっせん後直ちに未分譲住宅の
一般公募をする意思がないことを説明しなかった。
以上の諸点に照らすと,住宅公団は,被上告人らが,
本件優先購入条項により,本件各譲渡契約締結の時点において,
被上告人らに対するあっせん後未分譲住宅の
一般公募が直ちに行われると認識していたことを
少なくとも容易に知ることができたにもかかわらず,
被上告人らに対し,上記一般公募を直ちにする意思が
ないことを全く説明せず,これにより被上告人らが
住宅公団の設定に係る分譲住宅の価格の適否について
十分に検討した上で本件各譲渡契約を締結するか否かを
決定する機会を奪ったものというべきであって,
住宅公団が当該説明をしなかったことは
信義誠実の原則に著しく違反するものであるといわざるを得ない。
そうすると,被上告人らが住宅公団との間で
本件各譲渡契約を締結するか否かの意思決定は
財産的利益に関するものではあるが,
住宅公団の上記行為は慰謝料請求権の発生を
肯認し得る違法行為と評価することが相当である。
・行政書士受験生にオススメのAmazon Kindle Unlimitedで読める本
スポンサードリンク
関連記事