都営芝浦と畜場事件
(平成元年12月14日最高裁)
事件番号 昭和61(オ)655
地方公共団体が原価を著しく下回る認可料金を徴収して
と畜場事業を行うことが
昭和28年公正取引委員会告示第11号(不公正な取引方法)の5にいう
「不当に低い対価をもって」した行為及び昭和57年回
委員会告示第15号(不公正な取引方法)の6にいう
「正当な理由がないのに」した行為にあたるかについて、
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
独占禁止法2条1項の「事業者」について
独占禁止法2条1項は、事業者とは、
商業、工業、金融業その他の事業を行う者をいうと規定しており、
この事業はなんらかの経済的利益の供給に対応し反対給付を
反覆継続して受ける経済活動を指し、
その主体の法的性格は問うところではないから、
地方公共団体も、同法の適用除外規定がない以上、
かかる経済活動の主体たる関係において
事業者に当たると解すべきである。
したがって、地方公共団体がと場料を徴収して
と畜場事業を経営する場合には、
と畜場法による料金認可制度の下においても
不当廉売規制を受けるものというべきである。
「不当に」と「正当な理由がないのに」した行為
被上告人は、と場料を徴収して
と畜場事業を経営する地方公共団体であるが、
昭和40年度以降、本件係争年間を含め、認可額どおりであるとはいえ
原価を著しく下回ると場料を徴収してきたものであって、
このように芝浦のと場料が長期間にわたり低廉で推移してきたのは、
原審が適法に確定したところによると、
と場料の値上げには生産者が敏感に反応して、
芝浦への生体の集荷量の減少、都食肉市場の卸売価格ひいて
都民に対する小売価格の高騰を招く可能性があるところから、
かかる事態を回避して集荷量の確保及び
価格の安定を図るとの政策目的達成のため、
赤字経営の防止よりは物価抑制策を優先させることとし、
東京都一般会計からの補助金により
赤字分を補填してきたことによる、
というのである。
料金認可制度の下においても不当廉売規制が
及ぶことは前記説示のとおりであり、
また、公営中心主義を廃止したと畜場法の下において、
公営企業であると畜場の事業主体が
特定の政策目的から廉売行為に出たというだけでは、
公正競争阻害性を欠くということはできないことも
独占禁止法19条の規定の趣旨から明らかである。
しかしながら、被上告人の意図・目的が右のようなものであって、
前示のようななD及び芝浦を含むと畜場事業の競争関係の実態、
ことに競争の地理的範囲、競争事業者の認可額の実情、
と畜場市場の状況、上告人の実徴収額が
認可額を下回った事情等を総合考慮すれば、
被上告人の前示行為は、公正な競争を
阻害するものではないといわざるを得ず、
旧指定の5にいう「不当に」ないし一般指定の6にいう
「正当な理由がないのに」した行為に当たるものということはできないから、
被上告人の右行為は独占禁止法19条に違反するものではない。
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