蓮華寺事件
平成元年9月8日最高裁
昭和61年(オ)第943号
包括宗教法人日蓮正宗(以下「日蓮正宗」)が、
住職であり、代表役員であった甲に、
甲の言説が同宗の教義等に反する異説として、
僧籍剥奪処分たる擯斥(ひんせき)処分に付しました。
この擯斥処分で、
住職たる地位、代表役員及び責任役員たる地位を失い、
寺院建物の占有権原を喪失したとして、
日蓮正宗は甲に対して、建物の所有権に基づき
その明渡を求め、甲は、本件擯斥処分は日蓮正宗の
管長たる地位を有しない者によってされ、
かつ、日蓮正宗宗規所定の
懲戒事由に該当しない無効な処分であると主張して、
争った裁判です。
この判例のポイントは、
擯斥処分の事の発端が、
「宗教上の教義、信仰の内容に関する対立」で、
その結果としての処分という事案に関して、
裁判所は立ち入ることができるのか?
という点です。
裁判所の見解
「宗教団体における宗教上の教義、
信仰に関する事項については、
憲法上国の干渉からの自由が保障されているのであるから、
これらの事項については、
裁判所は、その自由に介入すべきではなく、
一切の審判権を有しないとともに、
これらの事項にかかわる紛議については
厳に中立を保つべきであることは、
憲法20条のほか、宗教法人法1条2項、
85条の規定の趣旨に鑑み明らかである」
として、宗教法人の代表役員等の地位の前提として、
宗教上の地位の存否を判断する必要がある場合、
その地位の選任、剥奪に関する手続上の準則で
宗教上の教義、信仰に関する事項に
何らかかわりを有しないものに従って
その選任、剥奪がなされたかどうかのみを
審理判断すれば足りるときには、
裁判所は右の地位の存否の審理判断をすることができるが、
右の手続上の準則に従って選任、剥奪が
なされたかどうかにとどまらず、
宗教上の教義、信仰に関する事項をも
審理判断しなければならないときには、
裁判所は、かかる事項について一切の審判権を有しない以上、
右の地位の存否の審理判断をすることが
できないものといわなければならない
としました。
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