交通事故の物損の慰謝料についてわかりやすく解説します。

 

民法711条は、

他人の生命を侵害した者は、

被害者の父母、配偶者及び子に対しては、

その財産権が侵害されなかった場合においても、

損害の賠償をしなければならない。

と規定し、近親者の慰謝料請求を認めています。

また、この条文に掲げられた者に限らず、

同視しうる者の慰謝料請求を認めるのが判例です。

 

では、被害者が大事にしているモノに対する

慰謝料請求を認められるか?

という問題があります。

 

例えばペット(動物)は法律上「モノ」として

扱われますが、飼い主にとっては、

家族と同じくらいに大切な存在のはずです。

 

このペットの生命を失った場合や、

傷害を負った場合に、

単にペットの価格だけが賠償請求できるのか、

あるいは、ペットがダメージを受けたことに

対する精神的損害も含めて、

慰謝料を請求できるのか、ということが問題となります。

 

一般的には、

精神的損害は財産的損害の裏に隠れていて、

その損害は財産的損害にとどまり、

損害の賠償によって精神的苦痛は

慰謝されると考えられます。

 

一般的なモノに対する考え方はそうですが、

財産的損害の賠償によって賄いきれない

精神的損害がある場合は、

賠償すべきということにもなります。

 

つまり、持ち主、飼い主に通常のモノとして以上の

思い入れがあるモノについては、

単にそのモノの市場価値としての賠償ではなく、

被害者の精神的損害を補填する必要があると考えられます。

 

 

ペットの慰謝料の判例

平成20年4月25日の名古屋地裁の判例では、

取得原価6万5,000円のラブラドールレトリバーが

第二腰椎圧迫骨折に伴う後肢麻痺を受傷したことについて、

治療費76万3,560円と、慰謝料として飼い主の夫婦に

夫に30万円、妻に50万円を認めました。

また、控訴審では、治療費と車椅子製作費の計13万6,500円の他、

慰謝料各20万円(過失相殺10%)を認めました。

 

「侵害への恐怖」についての慰謝料

昭和48年3月30日の大阪地裁の判例では、

深夜、交通事故車両が侵入し、家屋を破損し、

その衝撃により家族に多大な精神的苦痛を受けたとして

「侵害への恐怖」について、12万円の慰謝料を認めました。

 

その他にも、交通事故車両が家屋を破損した場合に

慰謝料を認めた判例がありますが、

こちらはペットの場合の「モノへの愛情」ではなく、

「侵害への恐怖」についての慰謝料も

認められうるということになります。

 

と、このように物損に対する慰謝料を認めた判例を

紹介しましたが、物損に対する慰謝料は、

一般的には認められないものですが、

認められることもあるということですので、

誤解のないようお願いいたします。

 

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