衆議院小選挙区比例代表並立制
(平成11年11月10日最高裁判所)
事件番号 平成11(行ツ)35
選挙人は、改正公職選挙法の衆議院議員選挙の
仕組みに関する規定が憲法に違反し、無効であるとして、
これに依拠する2006年(平成18年)10月10日施行の衆議院議員選挙の、
東京都選挙区における比例代表選挙の無効と、
同選挙のうち、東京都第五区における
小選挙区選挙の無効を主張して、
それぞれ選挙無効訴訟を提起しました。
最高裁判所の見解
重複立候補制の合憲性
両議院の議員の各選挙制度の仕組みの具体的決定を
原則として国会の広い裁量にゆだねているので、
国会は、その裁量により、衆議院議員及び参議院議員
それぞれについて公正かつ効果的な代表を
選出するという目標を実現するために
適切な選挙制度の仕組みを決定することができるのであるから、
国会が新たな選挙制度の仕組みを採用した場合には、
その具体的に定めたところが、右の制約や法の下の平等などの
憲法上の要請に反するため国会の右のような
広い裁量権を考慮してもなおその限界を超えており、
これを是認することができない場合に、
初めてこれが憲法に違反することになるものと解すべき。
同時に行われる二つの選挙に同一人が
重複して立候補をすることを認めるか否かは、
国会が裁量で決定できる。
政策本位、政党本位の選挙制度というべき
比例代表選挙と小選挙区選挙とに
重複して立候補することができる者が、
候補者届出政党の要件と衆議院名簿届出政党等の要件の両方を
充足する政党等に所属する者に限定されることには
相応の合理性が認められ、
不当に立候補の自由や選挙権の行使を制限するとはいえず、
国会の裁量権の限界を超えるとは解されないとしました。
小選挙区制の合憲性
小選挙区制は、全国的にみて
国民の高い支持を集めた政党等に所属する者が
得票率以上の割合で議席を獲得する可能性があって、
民意を集約し政権の安定につながる特質を有する反面、
このような支持を集めることができれば、
野党や少数派政党等であっても多数の議席を
獲得することができる可能性があり、
政権の交代を促す特質をも有するということができ、
また、個々の選挙区においては、
このような全国的な支持を得ていない政党等に所属する者でも、
当該選挙区において高い支持を集めることができれば
当選することができるという特質をも有するものであって、
特定の政党等にとってのみ有利な制度とはいえない。
小選挙区制の下においては
死票を多く生む可能性があることは否定し難いが、
死票はいかなる制度でも生ずるものであり、
当選人は原則として相対多数を得ることをもって足りる点及び
当選人の得票数の和よりその余の票数(死票数)の方が多いことが
あり得る点において中選挙区制と異なるところはなく、
各選挙区における最高得票者をもって当選人とすることが
選挙人の総意を示したものではないとはいえないから、
この点をもって憲法の要請に反するということはできない。
このように、小選挙区制は、選挙を通じて
国民の総意を議席に反映させる一つの合理的方法ということができ、
これによって選出された議員が全国民の代表であるという性格と
矛盾抵触するものではないと考えられるから、
小選挙区制を採用したことが
国会の裁量の限界を超えるということはできず、
所論の憲法の要請や各規定に違反するとは認められない
としました。
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