船主責任制限法の合憲性(昭和55年11月5日)
1977年(昭和52年)、甲所有の船(59.53トン)が
X所有の船(499.32トン)に衝突し、
Xの船が沈没する事故が起こりました。
甲は損害賠償責任を負うことになり、
損害額は約2億1,000万円という莫大な額となり、
甲は船主責任制限法に基づき、責任制限手続開始の申し立てをし、
裁判所が手続きの開始決定をし、甲の責任の限度額は690万円となりました。
賠償額が2億円以上も圧縮されてしまう事になったXは、
この決定に即時抗告しましたが、棄却され、特別抗告をしました。
Xは、船主責任制限法は、債権者の犠牲において、
船舶所有者を有利にするもので、明らかに債権者の権利を侵害し、
本件のように小型船舶の過失により大型船舶を沈没させて
大規模な損害が発生した場合、強度の債権侵害が発生するとして、
船主責任制限法の規定は憲法29条に違反すると主張しました。
最高裁判所の見解
船舶所有者の責任を制限する制度は、
古くから世界各国において採用されてきたもので、
第2章の規定は国際条約の規定に即して定められたものであり、
国際的性格の強い海運業において、
我が国だけこの制度を採用しないのは、
実際上困難であるとしました。
また、損害が船舶所有者の故意または過失によって
発生した場合など一定の場合に制限債権としない規定や、
責任の加重や無過失責任が認められる点も考慮すると、
第2章の規定は、公共の福祉に適合し、
憲法29条1項、2項に違反しないとしました。
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