期限付逮捕許諾請求事件
(昭和29年3月6日)
衆議院議員Xに贈収の被疑事実があるとして、
東京地検が東京簡易裁判所に逮捕状を請求しました。
内閣に逮捕許諾の要求書を提出し、
内閣が衆議院に付議したところ、
衆議院は、逮捕勾留を3月3日までとする期限を付けて
Xに対する逮捕許諾を議決しました。
裁判所は逮捕状を発して、この逮捕状執行により、
Xは逮捕されましたが、この勾留状には、
3月3日までという期限が付されていませんでした。
結果、Xは、3月7日まで東京拘置所に
拘禁されることになりました。
Xは、期限を付さなかったのは、
憲法50条及び国会法33条に反するとして、
取消を求める準抗告を行いました。
裁判所の見解
『憲法第50条が両議院の議員は法律の定める場合を除いて
国会の会期中逮捕されないことを規定し、
国会法第33条が各議院の議員は除外における
現行犯の場合を除いては会期中その院の許諾がなければ
逮捕されないことを保障している所以のものは、
国の立法機関である国会の使命の重大である点を考慮して、
現に国会の審議に当っている議院の職務を尊重し、
議員に犯罪の嫌疑がある場合においても苟も
犯罪捜査権或は司法権の行使を誤り又はこれを濫用して
国会議員の職務の遂行を不当に阻止妨害することのないよう、
院外における現行犯罪等逮捕の適法性及び
必要性の明確な場合を除いて
各議院自らに所属議員に対する逮捕の適法性及び必要性を
判断する権能を与へたものと解しなければならない。
逮捕が適法にしてその必要性の明白な場合においても
尚国会議員なるの故をもって適正なる犯罪捜査権或は
司法権行使を制限し得るものではない。
このことは院外における現行犯罪の場合には議院の許諾なくして
逮捕し得るものとしていることによって明瞭である。
かくの如く議院の逮捕許諾権は議員に対する逮捕の適法性及び
必要性を判断して不当不必要な逮捕を拒否し得る権能であるから、
議員に対しては一般の犯罪被疑者を逮捕する場合よりも
特に国政審議の重要性の考慮からより
高度の必要性を要求することもあり得るから、
このような場合には尚これを不必要な逮捕として
許諾を拒否することも肯認し得るけれども、
荀も右の観点において適法にして且必要な逮捕と認める限り
無条件にこれを許諾しなければならない。
随って議員の逮捕を許諾する限り右逮捕の正当性を承認するものであって
逮捕を許諾しながらその期間を制限するが如きは
逮捕許諾権の本質を無視した
不法な措置と謂はなければならない。
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