大日本印刷事件(採用内定の取消し)

(昭和54年7月20日最高裁)

事件番号  昭和52(オ)94

 

総合印刷を業とするA会社は、昭和43年に、翌年3月卒業予定者の

新卒採用を行っていました。

 

Xは、これに応募し文書で採用内定の通知を受け、

誓約書に所要事項を記入し、提出しました。

 

ところが、A会社はXに理由を示さずに、

Xの入社2カ月前に内定の取り消しを行いました。

 

その後、取消しの理由が、

「当初から感じていたグルーミー(陰気)な

印象がぬぐえない。」

ということをA社が明らかにしました。

 

Xは、取消しは無効で、従業員としての

地位にあることの確認を求めて訴えを提起した。

 

一審、原審、ともにXの請求を認容し、

A会社が上告をしました。

 

最高裁判所の見解

いわゆる採用内定の制度は、

従来わが国において広く行われているところであるが、

その実態は多様であるため、採用内定の法的性質について

一義的に論断することは困難というべきである。

 

したがって、具体的事案につき、

採用内定の法的性質を判断するにあたっては、

当該企業の当該年度における採用内定の事実関係に即して

これを検討する必要がある

 

本件採用内定通知のほかには労働契約締結のための

特段の意思表示をすることが

予定されていなかったことを考慮するとき、

A会社からの募集(申込みの誘引)に対し、

Xが応募したのは、労働契約の申込みであり、

これに対するA会社からの採用内定通知は、

右申込みに対する承諾であって、Xの本件誓約書の提出とあいまって、

これにより、XとA会社の間にXの就労の始期を昭和44年大学卒業直後とし、

それまでの間、本件誓約書記載の5項目の採用内定取消事由に基づく

解約権を留保した労働契約が成立したと解するのが相当である。

 

採用内定期間中の留保解約権の行使は、

試用期間中の留保解約権の行使と同様に扱うべきであり、

採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、

また知ることが期待できないような事実であって、

これを理由として採用内定を取消すことが

解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ

社会通念上相当として是認することができるものに限られると

解するのが相当である。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

 

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