山口観光事件(懲戒処分事由の事後的追加)
(平成8年9月26日最高裁)
事件番号 平成8(オ)752
Y会社の女性従業員Xは、疲労のため
翌日から2、3日の休暇を請求したところ、
Y会社の就業規則所定の懲戒事由である
「正当な理由なく、しばしば無断欠勤し、
業務に不熱心であるとき」
に該当するとして、懲戒処分を受けました。
Xが、懲戒処分の有効性を争って、
地位保全の仮処分を申し立てたところ、
Y会社は答弁書を通して、
仮に懲戒解雇が無効であるとしても、
XがY社に採用される際に実際よりも年齢を若く
記載した履歴書を提出していたことが、
就業規則所定の懲戒事由である
「重要な経歴をいつわり、その他不正な手段により入社したとき」
に該当しているとして、それを理由とする
予備的な懲戒解雇(予備的解雇)の意思表示も行いました。
一審は、最初の懲戒解雇は無効とし、
経歴詐称については、懲戒解雇事由となるものの、
予備的解雇の意思表示をした時点で有効となるものとして、
予備的解雇の時点までの未払い賃金を認定し、
XとY会社双方が控訴し、いずれも棄却され、
Y会社が上告しました。
最高裁判所の見解
使用者が労働者に対して行う懲戒は、
労働者の企業秩序違反行為を理由として、
一種の秩序罰を課するものであるから、
具体的な懲戒の適否は、その理由とされた
非違行為との関係において判断されるべきものである。
したがって、懲戒当時に使用者が認識していなかった非違行為は、
特段の事情のない限り、当該懲戒の理由と
されたものでないことが明らかであるから、
その存在をもって当該懲戒の有効性を
根拠付けることはできないものというべきである。
これを本件についてみるに、
本件懲戒解雇は、Xが休暇を請求したことや
その際の応接態度等を理由としてされたものであって、
本件懲戒解雇当時、Xにおいて、
Xの年齢詐称の事実を認識していなかったというのであるから、
右年齢詐称をもって本件懲戒解雇の有効性を
根拠付けることはできない。
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