リラックス法学部 > 初学者の部屋 > 取消すことのできる行為はいつまで取り消せるのか?
大学2年で成人したヨネヤマですが、
「未成年者が法定代理人の同意を得ないでした法律行為は
取り消すことができる」という法律を知り、
「いつまで取り消せるのだろう?」
という事が気になりました。
大学入学してすぐに
マキノにゲームを売ったヨネヤマですが、
マキノが今「取り消す」
と言ったらどうなるのでしょうか?
また、取り消す事のできる
「一応有効な」法律行為を、
取り消す事のできない
「完全に有効な」法律行為にするには
どうしたらよいのでしょうか?
後者の方から考えていきたいと思います。
「一応有効な」法律行為を
「完全に有効な」法律行為にする意思表示を
追認
といいます。
民法の123条、124条をごらんください。
(取消し及び追認の方法)
第百二十三条
取り消すことができる行為の相手方が
確定している場合には、
その取消し又は追認は、
相手方に対する意思表示によってする。
(追認の要件)
第百二十四条
追認は、取消しの原因となっていた状況が
消滅した後にしなければ、
その効力を生じない。
まずは124条の方から考えますと、
「取消しの原因となっていた状況」
とは、未成年者という状況です。
成人したヨネヤマとマキノは
「取消しの原因となっていた状況」
が消滅していますので、
自分で有効に追認することができる
という事になります。
次に123条は
「相手方に対する意思表示によってする」
とありますので、マキノに対して、
ゲームの売買契約を追認することで、
「一応有効な」法律行為を
「完全に有効な」法律行為に
することができます。
では取消権はいつまで行使できるのでしょうか?
民法126条をごらんください。
(取消権の期間の制限)
第百二十六条
取消権は、追認をすることができる時から
五年間行使しないときは、時効によって消滅する。
行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
注意していただきたいのは
「追認することができる時から」
という点です。
試験の問題で
「取消しできる時から五年」
と出題され、
「おー、五年五年!覚えてるラッキー」
と正解だと思って選ぶと
不正解になります。
「追認できる時」と
「取消しできる時」は違うのです。
今回の場合、
「追認できる時」は
成人した時からですが、
「取消し」は
契約直後の未成年者の時からできるのです。
このように法律では
「いつから」という起算点が
非常に重要ですので、
注意して確認してください。
そして119条をごらんください。
(無効な行為の追認)
第百十九条
無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。
ただし、当事者がその行為の無効であることを知って
追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。
今まで「取消し」と「無効」は違う
という話をしてきましたが、
このように無効な行為を
追認することはできません。
「取消し」と「無効」の細かい違いは
また別の回に説明いたしますが、
今回は無効な行為を追認することはできない
という事を覚えてください。
今まで出てきた取消し原因は
◯制限行為能力者 ◯詐欺又は強迫
がありました。
今回は未成年者の取消しを
例に上げて説明いたしましたが、
今回の条文の規定は詐欺又は取消しや、
成年後見人、保佐人、補助人の
取消し、追認の場合も共通の規定です。
最後に取消し、追認に関する条文を、
今回紹介しなかった部分も含めて
掲載しますので、
それぞれの場合をイメージして、
読んでみてください。
(取消権者)
第百二十条
行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、
制限行為能力者又はその代理人、
承継人若しくは同意をすることができる者に限り、
取り消すことができる。
2 詐欺又は強迫によって
取り消すことができる行為は、
瑕疵ある意思表示をした者又は
その代理人若しくは承継人に限り、
取り消すことができる。
※承継人とは本人が亡くなった場合、
その相続人とお考えください。
※瑕疵(かし)とは、
「不完全な」とお考えください。
(取消しの効果)
第百二十一条
取り消された行為は、
初めから無効であったものとみなす。
ただし、制限行為能力者は、
その行為によって
現に利益を受けている限度において、
返還の義務を負う。
※ただし書きの内容は別の回で説明します
(取り消すことができる行為の追認)
第百二十二条
取り消すことができる行為は、
第百二十条に規定する者が追認したときは、
以後、取り消すことができない。
ただし、追認によって
第三者の権利を害することはできない。
※ただし書きは、今は無視してください(笑)
(取消し及び追認の方法)
第百二十三条
取り消すことができる行為の相手方が
確定している場合には、
その取消し又は追認は、
相手方に対する意思表示によってする。
(追認の要件)
第百二十四条
追認は、取消しの原因となっていた状況が
消滅した後にしなければ、その効力を生じない。
2 成年被後見人は、
行為能力者となった後に
その行為を了知したときは、
その了知をした後でなければ、
追認をすることができない。
3 前二項の規定は、
法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは
補助人が追認をする場合には、
適用しない。
(取消権の期間の制限)
第百二十六条
取消権は、追認をすることができる時から
五年間行使しないときは、
時効によって消滅する。
行為の時から二十年を経過したときも、
同様とする。
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