道路交通法違反、業務上過失致死(観念的競合か併合罪か)
(昭和49年5月29日最高裁)
事件番号 昭和47(あ)1896
この裁判では、
酒に酔った状態で自動車を運転中に過失により
人身事故を発生させた場合における道路交通法
(昭和45年法律第86号による改正前のもの)
65条、117条の2第1号の酒酔い運転の所為と
業務上過失致死の所為が、併合罪となるかについて
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
刑法54条1項前段の規定は、
一個の行為が同時に数個の犯罪構成要件に該当して
数個の犯罪が競合する場合において、
これを処断上の一罪として刑を科する趣旨のものであるところ、
右規定にいう一個の行為とは、法的評価をはなれ構成要件的観点を
捨象した自然的観察のもとで、
行為者の動態が社会的見解上一個のものとの
評価をうける場合をいうと解すべきである。
ところで、本件の事例のような、酒に酔った状態で
自動車を運転中に過って人身事故を発生させた場合についてみるに、
もともと自動車を運転する行為は、その形態が、通常、
時間的継続と場所的移動とを伴うものであるのに対し、
その過程において人身事故を発生させる行為は、
運転継続中における一時点一場所における事象であって、
前記の自然的観察からするならば、両者は、
酒に酔った状態で運転したことが事故を惹起した
過失の内容をなすものかどうかにかかわりなく、
社会的見解上別個のものと評価すべきであって、
これを一個のものとみることはできない。
したがって、本件における酒酔い運転の罪と
その運転中に行なわれた業務上過失致死の罪とは
併合罪の関係にあるものと解するのが相当であり、
原判決のこの点に関する結論は正当というべきである。
以上の理由により、当裁判所は、
所論引用の最高裁判所の判例を変更して、
原判決の判断を維持するのを相当と認めるので、結局、
最高裁判所の判例違反をいう論旨は
原判決破棄の理由とはなりえないものである。
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