横領後の横領
(平成15年4月23日最高裁)
事件番号 平成13(あ)746
この裁判では、委託を受けて他人の不動産を占有する者が
これに抵当権を設定してその旨の登記を了した後、
これについて売却等の所有権移転行為を行い
その旨の登記を了した場合において後行の所有権移転行為のみが
横領罪として起訴されたときの審理方法について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
委託を受けて他人の不動産を占有する者が,
これにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了した後においても,
その不動産は他人の物であり,受託者がこれを占有していることに変わりはなく,
受託者が,その後,その不動産につき,
ほしいままに売却等による所有権移転行為を行い
その旨の登記を了したときは,委託の任務に背いて,その物につき権限がないのに
所有者でなければできないような処分をしたものにほかならない。
したがって,売却等による所有権移転行為について,
横領罪の成立自体は,これを肯定することができるというべきであり,
先行の抵当権設定行為が存在することは,後行の所有権移転行為について犯罪の
成立自体を妨げる事情にはならないと解するのが相当である。
このように,所有権移転行為について横領罪が成立する以上,
先行する抵当権設定行為について横領罪が成立する場合における同罪と
後行の所有権移転による横領罪との罪数評価のいかんにかかわらず,
検察官は,事案の軽重,立証の難易等諸般の事情を考慮し,
先行の抵当権設定行為ではなく,後行の所有権移転行為をとらえて
公訴を提起することができるものと解される。
また,そのような公訴の提起を受けた裁判所は,
所有権移転の点だけを審判の対象とすべきであり,
犯罪の成否を決するに当たり,売却に先立って
横領罪を構成する抵当権設定行為があったかどうかというような
訴因外の事情に立ち入って審理判断すべきものではない。
このような場合に,被告人に対し,
訴因外の犯罪事実を主張立証することによって
訴因とされている事実について
犯罪の成否を争うことを許容することは,
訴因外の犯罪事実をめぐって,被告人が犯罪成立の証明を,
検察官が犯罪不成立の証明を志向するなど,
当事者双方に不自然な訴訟活動を行わせることにもなりかねず,
訴因制度を採る訴訟手続の本旨に沿わないものというべきである。
以上の点は,業務上横領罪についても異なるものではない。
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