生活保護処分に関する裁決の取消訴訟の被保護者の死亡と相続
(昭和42年5月24日最高裁)
事件番号 昭和39(行ツ)14
この裁判では、
被保護者の死亡と生活保護処分に関する裁決取消訴訟承継の成否について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
生活保護法の規定に基づき要保護者または
被保護者が国から生活保護を受けるのは、
単なる国の恩恵ないし社会政策の実施に伴う反射的利益ではなく、
法的権利であって、保護受給権とも称すべきものと解すべきである。
しかし、この権利は、
被保護者自身の最低限度の生活を維持するために
当該個人に与えられた一身専属の権利であって、
他にこれを譲渡し得ないし(59条参照)、
相続の対象ともなり得ないというべきである。
また、被保護者の生存中の扶助ですでに
遅滞にあるものの給付を求める権利についても、
医療扶助の場合はもちろんのこと、
金銭給付を内容とする生活扶助の場合でも、
それは当該被保護者の最低限度の生活の需要を
満たすことを目的とするものであって、
法の予定する目的以外に流用することを許さないものであるから、
当該被保護者の死亡によって当然消滅し、
相続の対象となり得ない、と解するのが相当である。
また、所論不当利得返還請求権は、
保護受給権を前提としてはじめて成立するものであり、
その保護受給権が右に述べたように一身専属の権利である以上、
相続の対象となり得ないと解するのが相当である。
されば、本件訴訟は、上告人の死亡と同時に終了し、
同人の相続人D、同Eの両名において
これを承継し得る余地はないもの、
といわなければならない。
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