国の国家公務員に対する安全配慮義務の有無
(昭和50年2月25日最高裁)
事件番号 昭和48(オ)383
この裁判では、
国の国家公務員に対する安全配慮義務について
見解を示しました。
最高裁判所の見解
国は、公務員に対し、国が公務遂行のために設置すべき場所、
施設もしくは器具等の設置管理又は公務員が国もしくは
上司の指示のもとに遂行する公務の管理にあたって、
公務員の生命及び健康等を危険から保護するよう
配慮すべき義務(以下「安全配慮義務」という。)
を負っているものと解すべきである。
もとより、右の安全配慮義務の具体的内容は、
公務員の職種、地位及び安全配慮義務が問題となる
当該具体的状況等によって異なるべきものであり、
自衛隊員の場合にあっては、更に当該勤務が
通常の作業時、訓練時、防衛出動時(自衛隊法76条)、
治安出動時(同法78条以下)又は災害派遣時(同法83条)の
いずれにおけるものであるか等によっても
異なりうべきものであるが、
国が、不法行為規範のもとにおいて私人に対し
その生命、健康等を保護すべき義務を負っているほかは、
いかなる場合においても公務員に対し
安全配慮義務を負うものではないと解することはできない。
けだし、右のような安全配慮義務は、ある法律関係に基づいて
特別な社会的接触の関係に入つた当事者間において、
当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が
相手方に対して信義則上負う義務として
一般的に認められるべきものであって、
国と公務員との間においても別異に解すべき論拠はなく、
公務員が前記の義務を安んじて誠実に履行するためには、国が、
公務員に対し安全配慮義務を負い、
これを尽くすことが必要不可欠であって、
国家公務員法93条ないし95条及び
これに基づく国家公務員災害補償法並びに
防衛庁職員給与法27条等の災害補償制度も
国が公務員に対し安全配慮義務を負うことを当然の前提とし、
この義務が尽くされたとしてもなお発生すべき
公務災害に対処するために設けられたものと解されるからである。
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