大阪市公文書公開条例の「個人に関する情報」

(平成15年11月11日最高裁)

事件番号  平成10(行ヒ)54

 

この裁判では、

大阪市公文書公開条例の「個人に関する情報」

について裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

本件条例6条2号は

「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に ,関する情報を除く。)」

であって,特定の個人が識別され,

又は識別され得るものについては,

同号ただし書所定の除外事由に当たるものを除き,

これが記録されている公文書を公開しないことができると規定している。

 

同号にいう「個人に関する情報」については

「事業を営む個人の当該事業に関する情報」が

除外されている以外には文言上何ら限定されていないから,

個人の思想,信条,健康状態,所得,学歴,家族構成,住所等の

私事に関する情報に限定されるものではなく,

個人にかかわりのある情報であれば 原則として

同号にいう  「個人に関する情報」

に当たると解するのが相当である

 

そして,法人その他の団体の従業員が

職務として行った行為に関する情報は,

職務の遂行に関する情報ではあっても,

当該行為者個人にとっては自己の社会的活動としての側面を有し,

個人にかかわりのあるものであることは否定することができない。

 

そうすると上記の職務の遂行に関する情報も,原則として,

同号にいう「個人に関する情報」に含まれるというべきである。

 

もっとも,同条は,2号において

「個人に関する情報」から

「事業を営む個人の当該事業に関する情報 を除外した上で

3号において 法人その他の団体 国 」 ,

「 (及び地方公共団体を除く。以下「法人等」という )

に関する情報又は事業を営む 。

個人の当該事業に関する情報」と定めて,

個人に関する情報と法人等に関する情報とを

それぞれ異なる類型の情報として

非公開事由を規定している。

 

これらの規定に照らせば,本件条例においては,

法人等を代表する者が職務として行う行為等

当該法人等の行為そのものと

評価される行為に関する情報については,

専ら法人等に関する情報としての非公開事由が

規定されているものと解するのが相当である。

 

したがって法人等の行為そのものと

評価される行為に関する情報は,

同条2号の非公開情報に当たらないと解すべきである。

 

そして,このような情報には,

法人等の代表者又はこれに準ずる地位にある者が

当該法人等の職務として行う行為に関する情報のほか

その他の者の行為に関する情報であっても ,

権限に基づいて当該法人等のために行う

契約の締結等に関する情報が含まれると解するのが相当である。

 

国及び地方公共団体の公務員の職務の遂行に関する情報は,

公務員個人の社会的活動としての側面を有するが,

公務員個人の私事に関する情報が含まれる場合を除き,

公務員個人が同条2号にいう「個人」に当たることを理由に

同号の非公開情報に当たるとはいえないものと

解するのが相当である。

 

その理由は,次のとおりである。本件条例は,

市民の市政参加を推進し,市政に対する

市民の理解と信頼の確保を図ることを目的とし,

そのために市民に公文書の公開を求める

権利を保障することとしており

(1条 ,実施機関に対し

「個人に関 る情報」の保護について

最大限の配慮をしつつも,

公文書の公開を請求する市民の権利を

十分尊重して本件条例を解釈適用する責務を負わせている(3条)のように,

本件条例は,大阪市の市政に関する情報を広く市民に公開することを

目的として定められたものであるところ,

同市の市政に関する情報の大部分は,

同市の公務員(特別職を含む )の職務の遂行に関する

情報ということができる。 

 

そうすると,本件条例が,

同市の公務員の職務の遂行に関する情報が

記録された公文書について,公務員個人の社会的活動としての

側面があることを理由に,これをすべて非公開とすることが

できるものとしているとは解し難いというべきである。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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