所得税法が夫婦の所得を合算切半して計算することにしていない事が憲法第24条に違反するか
(昭和36年9月6日最高裁)
事件番号 昭和34(オ)1193
この裁判では、
所得税法が夫婦の所得を合算切半して
計算することにしていない事が
憲法第24条に違反するかについて
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
憲法24条の法意を考えてみるに、同条は、
「婚姻は……夫婦が同等の権利を有することを基本として、
相互の協力により、維持されなければならない。」、
「配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に
関するその他の事項に関しては、法律は、
個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、
制定されなければならない。」
と規定しているが、それは、民主主義の基本原理である
個人の尊厳と両性の本質的平等の原則を婚姻および
家族の関係について定めたものであり、
男女両性は本質的に平等であるから、夫と妻との間に、
夫たり妻たるの故をもって権利の享有に
不平等な扱いをすることを禁じたものであって、
結局、継続的な夫婦関係を全体として観察した上で、
婚姻関係における夫と妻とが実質上同等の権利を
享有することを期待した趣旨の規定と解すべく、
個々具体の法律関係において、常に必らず
同一の権利を有すべきものであるというまでの要請を
包含するものではないと解するを相当とする。
次に、民法762条1項の規定をみると、
夫婦の一方が婚姻中の自己の名で得た財産は
その特有財産とすると定められ、
この規定は夫と妻の双方に平等に
適用されるものであるばかりでなく、
所論のいうように夫婦は一心同体であり一の協力体であって、
配偶者の一方の財産取得に対しては他方が
常に協力寄与するものであるとしても、
民法には、別に財産分与請求権、相続権ないし
扶養請求権等の権利が規定されており、
右夫婦相互の協力、寄与に対しては、
これらの権利を行使することにより、結局において
夫婦間に実質上の不平等が生じないよう
立法上の配慮がなされているということができる。
しからば、民法762条1項の規定は、
前記のような憲法24条の法意に照らし、
憲法の右条項に違反するものということができない。
それ故、本件に適用された所得税法が、
生計を一にする夫婦の所得の計算について、
民法762条1項によるいわゆる
別産主義に依拠しているものであるとしても、
同条項が憲法24条に違反するものといえないことは、
前記のとおりであるから、所得税法もまた違憲ということはできない。
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