指定及び通知を欠く株式の共同相続人の株主総会決議不存在確認の訴えの原告適格

(平成2年12月4日最高裁)

事件番号  平成1(オ)573

 

この裁判では、

指定及び通知を欠く株式の共同相続人が

株主総会決議不存在確認の訴えの原告適格について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

株式を相続により準共有するに至った共同相続人は、

商法203条2項の定めるところに従い、

右株式につき「株主ノ権利ヲ行使スベキ者一人」

(以下「権利行使者」という。)を定めて

会社に通知し、この権利行使者において

株主権を行使することを要するところ、

右共同相続人が準共有株主としての地位に基づいて

株主総会の決議不存在確認の訴えを提起する場合も、

右と理を異にするものではないから、

権利行使者としての指定を受けてその旨を会社に通知していないときは、

特段の事情がない限り、原告適格を有しないものと解するのが相当である。

 

しかしながら、株式を準共有する共同相続人間において

権利行使者の指定及び会社に対する通知を欠く場合であっても、

右株式が会社の発行済株式の全部に相当し、

共同相続人のうちの一人を取締役に選任する旨の

株主総会決議がされたとして

その旨登記されている本件のようなときは、

前述の特段の事情が存在し、他の共同相続人は、

右決議の不存在確認の訴えにつき

原告適格を有するものというべきである。

 

けだし、商法203条2項は、会社と株主との関係において

会社の事務処理の便宜を考慮した規定であるところ、

本件に見られるような場合には、会社は、本来、右訴訟において、

発行済株式の全部を準共有する共同相続人により

権利行使者の指定及び会社に対する通知が

履践されたことを前提として

株主総会の開催及びその総会における決議の成立を

主張・立証すべき立場にあり、それにもかかわらず、

他方、右手続の欠缺を主張して、

訴えを提起した当該共同相続人の原告適格を争うということは、

右株主総会の瑕疵を自認し、また、

本案における自己の立場を否定するものにほかならず、

右規定の趣旨を同一訴訟手続内で恣意的に使い分けるものとして、

訴訟上の防御権を濫用し著しく信義則に反して許されないからである。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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