道路交通法127条1項の規定に基づく反則金の納付の通告と抗告訴訟
(昭和57年7月15日最高裁)
事件番号 昭和55(行ツ)137
この裁判では、
道路交通法127条1項の規定に基づく
反則金の納付の通告と抗告訴訟について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
反則行為は本来犯罪を構成する行為であり、したがって
その成否も刑事手続において審判されるべきものであるが、
前記のような大量の違反事件処理の迅速化の目的から
行政手続としての交通反則通告制度を設け、
反則者がこれによる処理に服する途を選んだときは、
刑事手続によらないで事案の終結を
図ることとしたものと考えられる。
道路交通法127条1項の規定による警察本部長の反則金の
納付の通告(以下「通告」という。)があっても、
これにより通告を受けた者において
通告に係る反則金を納付すべき
法律上の義務が生ずるわけではなく、
ただその者が任意に右反則金を納付したときは
公訴が提起されないというにとどまり、納付しないときは、
検察官の公訴の提起によって刑事手続が開始され、
その手続において通告の理由となった
反則行為となるべき事実の有無等が
審判されることとなるものとされているが、
これは上記の趣旨を示すものにほかならない。
してみると、道路交通法は、通告を受けた者が、
その自由意思により、通告に係る反則金を納付し、
これによる事案の終結の途を選んだときは、
もはや当該通告の理由となった反則行為の
不成立等を主張して通告自体の適否を争い、
これに対する抗告訴訟によって
その効果の覆滅を図ることはこれを許さず、
右のような主張をしようとするのであれば、
反則金を納付せず、後に公訴が提起されたときにこれによって
開始された刑事手続の中でこれを争い、
これについて裁判所の審判を求める途を
選ぶべきであるとしているものと解するのが相当である。
もしそうでなく、右のような抗告訴訟が許されるものとすると、
本来刑事手続における審判対象として予定されている事項を
行政訴訟手続で審判することとなり、また、
刑事手続と行政訴訟手続との関係について
複雑困難な問題を生ずるのであって、
同法がこのような結果を予想し、
これを容認しているものとは到底考えられない。
右の次第であるから、通告に対する行政事件訴訟法による
取消訴訟は不適法というべきであり、
これと趣旨を同じくする原審の判断は正当である。
所論は、憲法32条違反をいうが、
通告が通告に係る反則金納付の法律上の
義務を課するものではなく、また、
通告の理由となった反則行為となるべき事実の有無等については
刑事手続においてこれを争う途が開かれていることは
前記のとおりであるから、
通告自体に対する不服申立ての途がないからといって、
所論憲法の条規に違反するものではなく、
このことは従来の判例の趣旨に徴して明らかである。
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