定期航空運送事業免許の取消訴訟と飛行場周辺住民の原告適格
(平成元年2月17日最高裁)
事件番号 昭和57(行ツ)46
この裁判では、
定期航空運送事業免許の取消訴訟と
飛行場周辺住民の原告適格について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
航空機の騒音による障害の被害者は、
飛行場周辺の一定の地域的範囲の住民に限定され、
その障害の程度は居住地域が離着陸経路に接近するにつれて
増大するものであり、他面、飛行場に航空機が
発着する場合に常にある程度の騒音が
伴うことはやむをえないところであり、また、
航空交通による利便が政治、経済、文化等の面において
今日の社会に多大の効用をもたらしていることにかんがみれば、
飛行場周辺に居住する者は、ある程度の航空機騒音については、
不可避のものとしてこれを甘受すべきであるといわざるをえず、
その騒音による障害が著しい程度に至つたときに初めて、
その防止・軽減を求めるための法的手段に訴えることを
許容しうるような利益侵害が
生じたものとせざるをえないのである。
このような航空機の騒音による障害の性質等を踏まえて、
前述した航空機騒音障害の防止の観点からの
定期航空運送事業に対する規制に関する法体系をみると、
法が、定期航空運送事業免許の審査において、
航空機の騒音による障害の防止の観点から、
申請に係る事業計画が法101条1項3号にいう
「経営上及び航空保安上適切なもの」であるかどうかを、
当該事業計画による使用飛行場周辺における
当該事業計画に基づく航空機の航行による
騒音障害の有無及び程度を考慮に入れたうえで
判断すべきものとしているのは、
単に飛行場周辺の環境上の利益を一般的公益として
保護しようとするにとどまらず、
飛行場周辺に居住する者が航空機の騒音によって
著しい障害を受けないという利益を
これら個々人の個別的利益としても
保護すべきとする趣旨を含むものと解することができるのである。
したがって、新たに付与された定期航空運送事業免許に係る
路線の使用飛行場の周辺に居住していて、
当該免許に係る事業が行われる結果、
当該飛行場を使用する各種航空機の騒音の程度、
当該飛行場の一日の離着陸回数、離着陸の時間帯等からして、
当該免許に係る路線を航行する航空機の騒音によって
社会通念上著しい障害を受けることとなる者は、
当該免許の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、
その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である。
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