学校事故と国家賠償責任
(昭和62年2月6日最高裁)
事件番号 昭和59(オ)1058
この裁判では、
学校の水泳の授業での事故と国家賠償責任について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」には、
公立学校における教師の教育活動も
含まれるものと解するのが相当であり、
これと同旨の原審の判断は、
正当として是認することができる。
学校の教師は、学校における教育活動により
生ずるおそれのある危険から
生徒を保護すべき義務を負っており、
危険を伴う技術を指導する場合には、
事故の発生を防止するために十分な措置を講じるべき
注意義務があることはいうまでもない。
本件についてこれをみるに、
所論の点に関する原審の事実認定は、
原判決挙示の証拠関係に照らして首肯することができ、
右の事実関係によれば、D教諭は、
中学校三年生の体育の授業として、
プールにおいて飛び込みの指導をしていた際、
スタート台上に静止した状態で頭から飛び込む方法の練習では、
水中深く入ってしまう者、
空中での姿勢が整わない者など未熱な生徒が多く、
その原因は足のけりが弱いことにあると判断し、次の段階として、
生徒に対し、二、三歩助走をしてスタート台脇の
プールの縁から飛び込む方法を一、二回させたのち、
更に二、三歩助走をしてスタート台に上がってから
飛び込む方法を指導したものであり、被上告人Bは、
右指導に従い最後の方法を練習中にプールの底に
頭部を激突させる事故に遭遇したものであるところ、
助走して飛び込む方法、ことに助走して
スタート台に上がってから行う方法は、
踏み切りに際してのタイミングの取り方及び
踏み切る位置の設定が難しく、
踏み切る角度を誤った場合には、極端に高く上がって
身体の平衡を失い、空中での身体の制御が不可能となり、
水中深く進入しやすくなるのであって、このことは、
飛び込みの指導にあたるD教諭にとって
十分予見しうるところであつたというのであるから、
スタート台上に静止した状態で
飛び込む方法についてさえ未熟な者の多い生徒に対して
右の飛び込み方法をさせることは、極めて危険であるから、
原判示のような措置、配慮をすべきであったのに、
それをしなかった点において、D教諭には
注意義務違反があつたといわなければならない。
もっとも、同教諭は、生徒に対して、
自信のない者はスタート台を使う必要はない旨を告げているが、
生徒が新しい技術を習得する過程にある中学校三年生であり、
右の飛び込み方法に伴う危険性を
十分理解していたとは考えられないので、
右のように告げたからといって、
注意義務を尽くしたことにはならないというべきである。
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