国又は公共団体の損害賠償責任
(昭和57年4月1日最高裁)
事件番号 昭和51(オ)1249
この裁判では、公務員による
一連の職務上の行為の過程において他人に被害を生ぜしめたが
具体的な加害行為を特定することができない場合の
国又は公共団体の損害賠償責任について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
国又は公共団体の公務員による
一連の職務上の行為の過程において
他人に被害を生ぜしめた場合において、
それが具体的にどの公務員の
どのような違法行為によるものであるかを
特定することができなくても、
右の一連の行為のうちのいずれかに
行為者の故意又は過失による違法行為があったのでなければ
右の被害が生ずることはなかったであろうと認められ、かつ、
それがどの行為であるにせよこれによる被害につき
行為者の属する国又は公共団体が
法律上賠償の責任を負うべき関係が存在するときは、
国又は公共団体は、加害行為不特定の故をもって
国家賠償法又は民法上の損害賠償責任を
免れることができないと解するのが相当であり、
原審の見解は、右と趣旨を同じくする限りにおいて
不当とはいえない。
しかしながら、この法理が肯定されるのは、
それらの一連の行為を組成する
各行為のいずれもが国又は同一の公共団体の
公務員の職務上の行為にあたる場合に限られ、
一部にこれに該当しない行為が含まれている場合には、
もとより右の法理は妥当しないのである。
思うに、右のレントゲン写真による検診及びその結果の報告は、
医師が専らその専門的技術及び知識経験を用いて行う行為であって、
医師の一般的診断行為と異なるところはないから、
特段の事由のない限り、それ自体としては
公権力の行使たる性質を有するものではないというべきところ、
本件における右検診等の行為は、
本件健康診断の過程においてされたものとはいえ、
右健康診断におけるその余の行為と切り離して
その性質を考察、決定することができるものであるから、
前記特段の事由のある場合にあたるものということはできず、
したがって、右検診等の行為を公権力の行使にあたる
公務員の職務上の行為と解することは相当でないというべきである。
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