児童養護施設の事故と損害賠償責任
(平成19年1月25日最高裁)
事件番号 平成17(受)2335
この裁判では、
児童養護施設の事故と損害賠償責任について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
法は,保護者による児童の養育監護について,
国又は地方公共団体が後見的な責任を負うことを前提に,
要保護児童に対して都道府県が有する権限及び責務を
具体的に規定する一方で,児童養護施設の長が入所児童に対して
監護,教育及び懲戒に関しその児童の福祉のため
必要な措置を採ることを認めている。
上記のような法の規定及び趣旨に照らせば,
3号措置に基づき児童養護施設に入所した児童に対する関係では,
入所後の施設における養育監護は本来都道府県が行うべき事務であり,
このような児童の養育監護に当たる児童養護施設の長は,
3号措置に伴い,本来都道府県が有する公的な権限を委譲されて
これを都道府県のために行使するものと解される。
したがって,都道府県による3号措置に基づき
社会福祉法人の設置運営する児童養護施設に入所した児童に対する
当該施設の職員等による養育監護行為は,
都道府県の公権力の行使に当たる
公務員の職務行為と解するのが相当である。
国家賠償法1条1項は,
国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が,
その職務を行うについて,故意又は過失によって
違法に他人に損害を与えた場合には,
国又は公共団体がその被害者に対して賠償の責めに任ずることとし,
公務員個人は民事上の損害賠償責任を負わないこととしたものと解される。
この趣旨からすれば,国又は公共団体以外の者の被用者が
第三者に損害を加えた場合であっても,
当該被用者の行為が国又は公共団体の公権力の行使に当たるとして
国又は公共団体が被害者に対して同項に基づく
損害賠償責任を負う場合には,被用者個人が
民法709条に基づく損害賠償責任を負わないのみならず,
使用者も同法715条に基づく損害賠償責任を
負わないと解するのが相当である。
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