自家用自動車保険普通保険約款所定の対人事故通知義務の懈怠の効果(法律行為の解釈)
(昭和62年2月20日最高裁)
事件番号 昭和60(オ)1365
この裁判では、
自家用自動車保険普通保険約款所定の
対人事故通知義務の懈怠の効果について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
対人事故の場合に右の期間内に事故通知がされなかったときには、
右例外に当たらない限り、
常に保険者が損害のてん補責任を免れうることを
定めたものと解するのは相当でなく、
保険者が損害のてん補責任を免れうる範囲の点についても、また、
事故通知義務が懈怠されたことにより生じる
法律効果の点についても、
右各規定が保険契約者及び被保険者に対して
事故通知義務を課している目的及び右義務の
法的性質からくる制限が自ら存するものというべきであるところ、
右各規定が、保険契約者又は被保険者に対して
事故通知義務を課している直接の目的は、保険者が、
早期に保険事故を知ることによって損害の発生を
最小限度にとどめるために必要な指示を保険契約者又は
被保険者等に与える等の善後措置を速やかに
講じることができるようにするとともに、
早期に事故状況・原因の調査、損害の費目・額の調査等を
行うことにより損害のてん補責任の有無及び
適正なてん補額を決定することができるようにすることにあり、また、
右事故通知義務は保険契約上の債務と解すべきであるから、
保険契約者又は被保険者が保険金を詐取し又は
保険者の事故発生の事情の調査、損害てん補責任の有無の調査
若しくはてん補額の確定を妨げる目的等保険契約における
信義誠実の原則上許されない目的のもとに
事故通知をしなかった場合においては
保険者は損害のてん補責任を免れうるものというべきであるが、
そうでない場合においては、保険者が前記の期間内に
事故通知を受けなかったことにより損害のてん補責任を免れるのは、
事故通知を受けなかったことにより損害を被ったときにおいて、
これにより取得する損害賠償請求権の限度においてであるというべきであり、
前記14条もかかる趣旨を定めた規定に
とどまるものと解するのが相当である。
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