民法96条3項にいう第三者にあたる場合
(昭和49年9月26日最高裁)
事件番号 昭和45(オ)344
この裁判では、
民法96条3項にいう第三者にあたる場合について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
民法96条1項、3項は、詐欺による意思表示をした者に対し、
その意思表示の取消権を与えることによって
詐欺被害者の救済をはかるとともに、他方その取消の効果を
「善意の第三者」との関係において制限することにより、
当該意思表示の有効なことを信頼して
新たに利害関係を有するに至った者の地位を
保護しようとする趣旨の規定であるから、
右の第三者の範囲は、同条のかような立法趣旨に照らして
合理的に画定されるべきであって、必ずしも、
所有権その他の物権の転得者で、かつ、これにつき
対抗要件を備えた者に限定しなければならない理由は、見出し難い。
ところで、本件農地については、
知事の許可がないかぎり所有権移転の効力を生じないが、
さりとて本件売買契約はなんらの効力を有しないものではなく、
特段の事情のないかぎり、売主である被上告人は、
買主であるEのため、知事に対し
所定の許可申請手続をなすべき義務を負い、
もしその許可があったときには所有権移転登記手続を
なすべき義務を負うに至るのであり、
これに対応して、買主は売主に対し、かような条件付の権利を取得し、かつ、
この権利を所有権移転請求権保全の仮登記によって
保全できると解すべきことは、当裁判所の判例の趣旨とするところである。
そうして、本件売渡担保契約により、被控訴会社は、
Eが本件農地について取得した右の権利を譲り受け、
仮登記移転の附記登記を経由したというのであり、
これにつき被上告人が承諾を与えた事実が確定されていない以上は、
被控訴会社が被上告人に対し、直接、本件農地の買主としての
権利主張をすることは許されないにしても、
本件売渡担保契約は当事者間においては有効と解しうるのであって、
これにより、被控訴会社は、もし本件売買契約について
農地法5条の許可がありEが本件農地の所有権を取得した場合には、
その所有権を正当に転得することのできる地位を
得たものということができる。
そうすると、被控訴会社は、以上の意味において、
本件売買契約から発生した法律関係について
新たに利害関係を有するに至つた者というべきであって、
民法96条3項の第三者にあたると解するのが相当である。
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