所有権に基づいて不動産を占有する者と民法第162条の適用の有無
(昭和42年7月21日最高裁)
事件番号 昭和40(オ)1265
この裁判では、
所有権に基づいて不動産を占有する者と
民法第162条の適用の有無について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
民法162条所定の占有者には、
権利なくして占有をした者のほか、
所有権に基づいて占有をした者をも
包含するものと解するのを相当とする。
すなわち、所有権に基づいて
不動産を占有する者についても、
民法162条の適用があるものと解すべきである。
けだし、取得時効は、当該物件を
永続して占有するという事実状態を、
一定の場合に、権利関係にまで高めようとする制度であるから、
所有権に基づいて不動産を永く占有する者であっても、
その登記を経由していない等のために
所有権取得の立証が困難であったり、
または所有権の取得を第三者に
対抗することができない等の場合において、
取得時効による権利取得を主張できると解することが
制度本来の趣旨に合致するものというべきであり、
民法162条が時効取得の対象物を他人の物としたのは、
通常の場合において、自己の物について
取得時効を援用することは
無意味であるからにほかならないのであって、
同条は、自己の物について取得時効の援用を
許さない趣旨ではないからである。
しかるに、原判決は、右と異なる見解のもとに
上告人ら主張の取得時効の抗弁を排斥したものであって、
右民法162条の解釈を誤った違法があるから、
その余の論旨について判断を加えるまでもなく、
破棄を免れない。
そして、上告人ら主張の右取得時効の抗弁の成否について
さらに審理を尽す必要がある。
・行政書士受験生にオススメのAmazon Kindle Unlimitedで読める本
スポンサードリンク
関連記事