将来発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約
(平成11年1月29日最高裁)
事件番号 平成9(オ)219
この裁判では、
将来発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
将来発生すべき診療報酬債権を目的とする
債権譲渡契約について、一定額以上が安定して発生することが
確実に期待されるそれほど遠い将来のものではないものを
目的とする限りにおいて有効とすべきものとしている。
しかしながら、将来発生すべき債権を
目的とする債権譲渡契約にあっては、
契約当事者は、譲渡の目的とされる
債権の発生の基礎を成す事情をしんしゃくし、
右事情の下における債権発生の可能性の程度を考慮した上、
右債権が見込みどおり発生しなかった場合に
譲受人に生ずる不利益については
譲渡人の契約上の責任の追及により
清算することとして、契約を締結するものと見るべきであるから、
右契約の締結時において右債権発生の可能性が低かったことは、
右契約の効力を当然に左右するものではないと解するのが相当である。
もっとも、契約締結時における譲渡人の資産状況、
右当時における譲渡人の営業等の推移に関する見込み、
契約内容、契約が締結された経緯等を総合的に考慮し、
将来の一定期間内に発生すべき債権を
目的とする債権譲渡契約について、
右期間の長さ等の契約内容が譲渡人の営業活動等に対して
社会通念に照らし相当とされる範囲を著しく逸脱する制限を加え、
又は他の債権者に不当な不利益を
与えるものであると見られるなどの
特段の事情の認められる場合には、右契約は
公序良俗に反するなどとして、その効力の全部又は
一部が否定されることがあるものというべきである。
所論引用に係る最高裁昭和51年(オ)第435号同53年12月15日
第二小法廷判決・裁判集民事125号839頁は、
契約締結後1年の間に支払担当機関から医師に対して
支払われるべき診療報酬債権を目的とする債権譲渡契約の有効性が
問題とされた事案において、当該事案の事実関係の下においては
これを肯定すべきものと判断したにとどまり、
将来発生すべき債権を目的とする債権譲渡契約の有効性に関する
一般的な基準を明らかにしたものとは解し難い。
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