共同不法行為と過失相殺
(平成13年3月13日最高裁)
事件番号 平成10(受)168
この裁判では、
共同不法行為と過失相殺について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
本件交通事故により,Eは放置すれば
死亡するに至る傷害を負ったものの,
事故後搬入された被上告人病院において,Eに対し
通常期待されるべき適切な経過観察がされるなどして
脳内出血が早期に発見され適切な治療が施されていれば,
高度の蓋然性をもってEを救命できたということができるから,
本件交通事故と本件医療事故とのいずれもが,
Eの死亡という不可分の一個の結果を招来し,
この結果について相当因果関係を有する関係にある。
したがって,本件交通事故における運転行為と
本件医療事故における医療行為とは
民法719条所定の共同不法行為に当たるから,
各不法行為者は被害者の被った損害の全額について
連帯して責任を負うべきものである。
本件のようにそれぞれ独立して成立する複数の不法行為が
順次競合した共同不法行為においても
別異に解する理由はないから,被害者との関係においては,
各不法行為者の結果発生に対する寄与の割合をもって
被害者の被った損害の額を案分し,
各不法行為者において責任を負うべき
損害額を限定することは許されないと解するのが相当である。
本件は,本件交通事故と本件医療事故という加害者及び
侵害行為を異にする二つの不法行為が
順次競合した共同不法行為であり,
各不法行為については加害者及び被害者の過失の内容も
別異の性質を有するものである。
ところで,過失相殺は
不法行為により生じた損害について
加害者と被害者との間において
それぞれの過失の割合を基準にして
相対的な負担の公平を図る制度であるから,
本件のような共同不法行為においても,
過失相殺は各不法行為の加害者と被害者との間の
過失の割合に応じてすべきものであり,
他の不法行為者と被害者との間における過失の割合を
しん酌して過失相殺をすることは許されない。
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