リラックス法学部 憲法判例憲法判例 石井記者事件の概要と判例の趣旨をわかりやすく解説

 

石井記者事件

最大判昭和27年8月6日

事件番号  昭和25(あ)2505

 

税務署員の収賄事件における逮捕状の

記載内容の事実が逮捕状の執行の翌日の朝刊に

掲載され、情報が事前に漏れていた疑いで、

国家公務員法違反被疑事件について、

新聞記者の石井記者が証人として召喚されました。

 

石井記者は記事の出どころについて

証言を求められたものの、

証人としての宣誓及び証言全部を拒否したため、

証言拒絶罪(刑法161条)で起訴され、

第一審、控訴審とも

石井記者に有罪判決が下されたため、

石井記者は「取材源の秘匿は新聞記者の

倫理であり、権利であって、

新聞そのものの表現の自由を守るために

絶対に必要な手段である」

と主張し、上告しました。

 

裁判所は、憲法21条は、

一般人に対して平等に表現の自由を保障したものであり、

新聞記者に特種な保障を

与えたものではないとしました。

 

第二十一条  

集会、結社及び言論、出版その他

一切の表現の自由は、これを保障する。

 

 

憲法21条の趣旨は

「言いたいことを言わせること」であり、

「これからいいたいこと」

の内容を作り出すための取材について、

その情報源の秘匿まで保障するものではなく

公の福祉のため最も重大な司法権の

公正な発動のため必要欠くべからざる証言の義務をも

犠牲にして、証言拒絶の権利までも

保障したものとは到底解することができない

としました。

 

なお、学説では取材源秘匿権を

承認する見解も有力です。

 

憲法21条は報道関係者の取材の自由及び

取材源秘匿権を直接保障する立場から、

新聞記者の証言拒絶を罰するのは違憲だとする見解と、

取材源秘匿は国民の知る権利の観点から、

裁判の公正よりも優越するという理由で、

正当な業務上の行為(刑法35条)として、

違法性を阻却すれば足り、

取材源秘匿権を憲法上の権利として

構成する必要はないとする見解もあります。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

 

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