ヤミ金融業者の違法な貸付金相当額を損益相殺あるいは損益相殺的な調整の対象として損害額から控除できるか
(平成20年6月10日最高裁)
事件番号 平成19(受)569
この裁判では、
ヤミ金融業者の違法な貸付金相当額を損益相殺あるいは
損益相殺的な調整の対象として損害額から控除できるかについて
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
民法708条は,不法原因給付,すなわち,
社会の倫理,道徳に反する醜悪な行為(以下「反倫理的行為」という。)
に係る給付については不当利得返還請求を許さない旨を定め,
これによって,反倫理的行為については,
同条ただし書に定める場合を除き,
法律上保護されないことを明らかにしたものと解すべきである。
したがって,反倫理的行為に該当する不法行為の被害者が,
これによって損害を被るとともに,
当該反倫理的行為に係る給付を受けて利益を得た場合には,
同利益については,加害者からの
不当利得返還請求が許されないだけでなく,
被害者からの不法行為に基づく損害賠償請求において
損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として
被害者の損害額から控除することも,
上記のような民法708条の趣旨に反するものとして
許されないものというべきである。
なお,原判決の引用する前記大法廷判決は,
不法行為の被害者の受けた利益が不法原因給付によって
生じたものではない場合について判示したものであり,
本件とは事案を異にする。
これを本件についてみると,前記事実関係によれば,
著しく高利の貸付けという形をとって上告人らから
元利金等の名目で違法に金員を取得し,
多大の利益を得るという反倫理的行為に該当する不法行為の手段として,
本件各店舗から上告人らに対して貸付けとしての
金員が交付されたというのであるから,
上記の金員の交付によって上告人らが得た利益は,
不法原因給付によって生じたものというべきであり,
同利益を損益相殺ないし損益相殺的な調整の対象として
上告人らの損害額から控除することは許されない。
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