空クレジット契約の保証契約の錯誤無効
(平成14年7月11日最高裁)
事件番号 平成11(受)602
この裁判では、
いわゆる空クレジット契約の保証契約の錯誤無効について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
保証契約は,特定の主債務を保証する契約であるから,
主債務がいかなるものであるかは,
保証契約の重要な内容である。
そして,主債務が,商品を購入する者が
その代金の立替払を依頼しその立替金を分割して
支払う立替払契約上の債務である場合には,
商品の売買契約の成立が立替払契約の前提となるから,
商品売買契約の成否は,原則として,
保証契約の重要な内容であると解するのが相当である。
これを本件についてみると,上記の事実関係によれば,
(1) 本件立替払契約は,被上告人において,
DがF機材から購入する本件機械の代金をF機材に立替払し,
Dは,被上告人に対し,立替金及び手数料の合計額を分割して支払う,
という形態のものであり,本件保証契約は本件立替払契約に基づき
Dが被上告人に対して負担する債務について連帯して
保証するものであるところ,
(2)本件立替払契約はいわゆる空クレジット契約であって,
本件機械の売買契約は存在せず,
(3)上告人は,本件保証契約を締結した際,
そのことを知らなかった,というのであるから,
本件保証契約における上告人の意思表示は
法律行為の要素に錯誤があったものというべきである。
本件立替払契約のようなクレジット契約が,
その経済的な実質は金融上の便宜を供与するにあるということは,
原判決の指摘するとおりである。
しかし,主たる債務が実体のある
正規のクレジット契約によるものである場合と,
空クレジットを利用することによって
不正常な形で金融の便益を得るものである場合とで,
主債務者の信用に実際上差があることは否定できず,
保証人にとって,主債務がどちらの態様のものであるかにより,
その負うべきリスクが異なってくるはずであり,
看過し得ない重要な相違があるといわざるをえない。
まして,前記のように,1通の本件契約書上に
本件立替払契約と本件保証契約が
併せ記載されている本件においては,
連帯保証人である上告人は,主債務者であるDが
本件機械を買い受けて被上告人に対し分割金を支払う態様の
正規の立替払契約であることを当然の前提とし,
これを本件保証契約の内容として
意思表示をしたものであることは,
一層明確であるといわなければならない。
以上によれば,上告人の本件保証契約の
意思表示に要素の錯誤がないとした
原審の判断には,法令の解釈適用を誤った違法があり,
この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。
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