通達の取消の訴えが許されないとされた事例
(昭和43年12月24日最高裁)
事件番号 昭和39(行ツ)87
この裁判では、
通達の取消の訴えについて
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
本件通達は、厚生省公衆衛生局環境衛生部長から
都道府県指定都市衛生主管部局長にあてて発せられたもので、
その内容は、墓地、埋葬等に関する法律13条に関し、
昭和24年8月22日付東京都衛生局長あて回答に示した見解を改め、
今後は内閣法制局第一部長の昭和35年2月15日付回答の趣旨にそって
解釈、運用することとしたことを明らかにすると同時に、
諸機関において、この点に留意して埋葬等に関する
事務処理をするよう求めたものであり、行政組織および
右法律の施行事務に関する関係法令を参しやくすれば、
本件通達は、被上告人がその権限にもとづき所掌事務について、
知事をも含めた関係行政機関に対し、法律の解釈、
運用の方針を示して、その職務権限の行使を
指揮したものと解せられる。
元来、通達は、原則として、法規の性質をもつものではなく、
上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対して
その職務権限の行使を指揮し、職務に関して
命令するために発するものであり、
このような通達は右機関および職員に対する
行政組織内部における命令にすぎないから、
これらのものがその通達に拘束されることはあっても、
一般の国民は直接これに拘束されるものではなく、
このことは、通達の内容が、法令の解釈や取扱いに関するもので、
国民の権利義務に重大なかかわりをもつようなものである場合においても
別段異なるところはない。
このように、通達は、元来、法規の性質をもつものではないから、
行政機関が通達の趣旨に反する処分をした場合においても、
そのことを理由として、その処分の効力が左右されるものではない。
また、裁判所がこれらの通達に
拘束されることのないことはもちろんで、
裁判所は、法令の解釈適用にあたっては、
通達に示された法令の解釈とは
異なる独自の解釈をすることができ、
通達に定める取扱いが法の趣旨に反するときは
独自にその違法を判定することもできる筋合である。
このような通達一般の性質、前述した本件通達の形式、内容および
原判決の引用する一審判決議定の事実
(拳示の証拠に照らし肯認することができる。)
その他原審の適法に確定した事実ならびに
墓地、埋葬等に関する法律の規定を併せ考えれば、
本件通達は従来とられていた法律の解釈や
取扱いを変更するものではあるが、
それはもっぱら知事以下の行政機関を拘束するにとどまるもので、
これらの機関は右通達に反する行為をすることはできないにしても、
国民は直接これに拘束されることはなく、従って、
右通達が直接に上告人の所論墓地経営権、管理権を侵害したり、
新たに埋葬の受忍義務を課したりするものとはいいえない。
また、墓地、埋葬等に関する法律21条違反の有無に関しても、
裁判所は本件通達における法律解釈等に
拘束されるものではないのみならず、同法13条に
いわゆる正当の理由の判断にあたっては、
本件通達に示されている事情以外の事情をも
考慮すべきものと解せられるから、
本件通達が発せられたからといって直ちに
上告人において刑罰を科せられるおそれがあるともいえず、
さらにまた、原審において上告人の主張するような損害、不利益は、
原判示のように、直接本件通達によって
被ったものということもできない。
そして、現行法上行政訴訟において
取消の訴の対象となりうるものは、
国民の権利義務、法律上の地位に直接具体的に
法律上の影響を及ぼすような
行政処分等でなければならないのであるから、
本件通達中所論の趣旨部分の取消を求める本件訴は
許されないものとして却下すべきものである。
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