違法収集証拠
(平成15年2月14日最高裁)
事件番号 平成13(あ)1678
この裁判では、
違法収集証拠について
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
本件逮捕には,逮捕時に逮捕状の呈示がなく,
逮捕状の緊急執行もされていない
(逮捕状の緊急執行の手続が執られていないことは,
本件の経過から明らかである。)という手続的な違法があるが,
それにとどまらず,警察官は,その手続的な違法を糊塗するため,
前記のとおり,逮捕状へ虚偽事項を記入し,
内容虚偽の捜査報告書を作成し,
更には,公判廷において事実と反する証言をしているのであって,
本件の経緯全体を通して表れたこのような警察官の態度を
総合的に考慮すれば,本件逮捕手続の違法の程度は,
令状主義の精神を潜脱し,没却するような
重大なものであると評価されても
やむを得ないものといわざるを得ない。
そして,このような違法な逮捕に密接に関連する証拠を許容することは,
将来における違法捜査抑制の見地からも相当でないと認められるから,
その証拠能力を否定すべきである
(最高裁昭和51年(あ)第865号同53年9月7日
第一小法廷判決・刑集32巻6号1672頁参照)。
前記のとおり,本件採尿は,本件逮捕の当日にされたものであり,
その尿は,上記のとおり重大な違法があると評価される
本件逮捕と密接な関連を有する証拠であるというべきである。
また,その鑑定書も,同様な評価を与えられるべきものである。
したがって,原判決の判断は,
上記鑑定書の証拠能力を否定した点に関する限り,相当である。
次に,本件覚せい剤は,被告人の覚せい剤使用を被疑事実とし,
被告人方を捜索すべき場所として発付された
捜索差押許可状に基づいて行われた
捜索により発見されて差し押さえられたものであるが,
上記捜索差押許可状は上記の鑑定書を疎明資料として
発付されたものであるから,証拠能力のない証拠と
関連性を有する証拠というべきである。
しかし,本件覚せい剤の差押えは,
司法審査を経て発付された捜索差押許可状によってされたものであること,
逮捕前に適法に発付されていた被告人に対する窃盗事件についての
捜索差押許可状の執行と併せて行われたものであることなど,
本件の諸事情にかんがみると,本件覚せい剤の差押えと
上記の鑑定書との関連性は密接なものではないというべきである。
したがって,本件覚せい剤及びこれに関する鑑定書については,
その収集手続に重大な違法があるとまではいえず,その他,
これらの証拠の重要性等諸般の事情を総合すると,
その証拠能力を否定することはできない。
そうすると,原判決は,上記の点において
判決に影響を及ぼすべき法令の解釈適用の誤りがあり,
これを破棄しなければ著しく正義に反すると認められる。
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