訴因変更命令には形成的効力が認められるか
(昭和40年4月28日最高裁)
事件番号 昭和37(あ)3011
この裁判では、
訴因変更命令には形成的効力が認められるかについて
裁判所が見解を示しました。
最高裁判所の見解
職権により調査するに、被告人Aに対する関係において、
第一審は、衆議院議員総選挙に立候補の決意を有する
Fに当選を得しめる目的でGが被告人Bほか
四名に対し金3,000円宛を供与した際、A被告人は、
その情を知りながら右Gを案内し、受供与者に紹介し、
更に受供与を勧める等その犯行を容易ならしめて
これを幇助したとして、
公職選挙法221条1項1号違反の幇助罪としての起訴に対し、
検察官の訴因変更がないのに、被告人Aが右Gと共謀の上、
被告人Bほか四名に対し前同趣旨で
現金3,000円宛を供与したという共同正犯の事実を認定し、原審も、
右の如き幇助犯としての起訴事実を、
第一審判決の如く共同正犯と認定しても、
被告人の防禦権の行使に実質的な不利益を与えるものでないから、
訴因変更の手続を要しない旨判示して、第一審判決を是認している。
しかし右のように共同正犯を認めるためには、
幇助の訴因には含まれていない共謀の事実を
新たに認定しなければならず、
また法定刑も重くなる場合であるから、
被告人の防禦権に影響を及ぼすことは明らかであって、
当然訴因変更を要するものといわなければならない。
この点に関する原審の法律判断は
誤まりであるといわざるを得ない。
尤も記録によれば、第一審は、第五回公判期日において
共同正犯に訴因を変更すべきことを命じ、
検察官から訴因変更の請求がないのに、
裁判所の命令により訴因が変更されたものとして
その後の手続を進めたことが認められる。
しかし検察官が裁判所の訴因変更命令に従わないのに、
裁判所の訴因変更命令により訴因が変更されたものとすることは、
裁判所に直接訴因を動かす権限を認めることになり、
かくては、訴因の変更を検察官の権限としている
刑訴法の基本的構造に反するから、訴因変更命令に
右のような効力を認めることは
到底できないものといわなければならない。
そうすると、裁判所から右命令を受けた検察官は
訴因を変更すべきであるけれども、検察官がこれに応じないのに、
共同正犯の事実を認定した一審判決は違法であって、
同判決および結果に於てこれを是認した原判決は
これを破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。
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