親権者変更の確定審判に基づく戸籍の届出

( 平成26年4月14日最高裁)

事件番号  平成25(許)26

 

この裁判では、

戸籍事務管掌者が親権者変更の確定審判に基づく戸籍の届出を

当該審判の法令違反を理由に不受理とすることの可否について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

(1) 民法819条は,1項から5項までにおいて,

子の父母が離婚する場合等には,

子は父又は母の一方の単独の親権に服することを前提として,

親権者の指定等について規定し,これらの規定を受けて,

6項において,親権者の変更について規定して,

親権者を他の一方に変更することができるとしている。

 

このような同条の規定の構造や

同条6項の規定の文理に照らせば,

子が実親の一方及び養親の共同親権に服する場合,

子の親権者を他の一方の実親に変更することは,

同項の予定しないところというべきである。

 

他方,上記の場合において,親権者による親権の行使が

不適切なもので子の保護の観点から

何らかの措置をとる必要があるときは,

親権喪失の審判等を通じて子の保護を図ることも可能である。

 

そうすると,子が実親の一方及び養親の共同親権に服する場合,

民法819条6項の規定に基づき,

子の親権者を他の一方の実親に

変更することはできないというべきである。

 

したがって,別件審判には,

民法819条6項の解釈適用についての法令違反があり,

これと同旨の原審の上記3(1)の判断は是認することができる。

 

この点に関する論旨は採用することができない。

 

(2) しかし,審判による親権者の変更は,

その届出によって親権者変更の効力が生ずるのではなく,

審判の確定によって形成的に

親権者変更の効力が生ずるのであるから,

たとえ当該審判が誤った法令の解釈に基づくものであったとしても,

当該審判が無効であるため

その判断内容に係る効力が生じない場合を除いては,

確定審判の形成力によって,親権者変更の効力が生じ,

当該審判によって親権者とされた者は子の親権者として

親権を行使することができることになる。

 

しかるに,このような親権者の変更が

戸籍に反映されないとすると,

子の親権に関し無用の紛争を招いて

子の福祉に反することになるおそれがあるほか,

身分関係を公証する戸籍の機能を害する結果ともなるものである。

 

また,戸籍事務管掌者は,戸籍の届出について

法令違反の有無を審査する権限を有するが,

法令上裁判所が判断すべきものとされている事項についての

確定審判に基づく戸籍の届出の場合には,

その審判に関する審査の範囲は,

当該審判の無効をもたらす

重大な法令違反の有無に限られるものと解される。

 

そうすると,戸籍事務管掌者は,

親権者変更の確定審判に基づく戸籍の届出について,

当該審判が無効であるため

その判断内容に係る効力が生じない場合を除き,

当該審判の法令違反を理由に上記届出を

不受理とする処分をすることができないというべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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