名張毒ぶどう酒殺人事件(刑訴法435条6号所定の再審事由が認められないとした原判断が是認された事例)
(平成25年10月16日最高裁)
事件番号 平成24(し)268
この裁判は、
刑訴法435条6号所定の再審事由が認められないとした
原判断が是認された事例です。
最高裁判所の見解
原審(差戻し後の異議審)の鑑定は,
科学的に合理性を有する試験方法を用いて,かつ,
当時の製法を基に再製造したニッカリンTにつき
実際にエーテル抽出を実施した上でTRIEPPは
エーテル抽出されないとの試験結果を得たものである上,
そのような結果を得た理由についてもTRIEPPの
分子構造等に由来すると考えられる旨を十分に説明しており,
合理的な科学的根拠を示したものであるということができる。
同鑑定によれば,本件使用毒物がニッカリンTであることと,
TRIEPPが事件検体からは検出されなかったこととは
何ら矛盾するものではないと認められる。
所論は,農薬を抽出する際には塩化ナトリウムを
飽和するまで加える方法(塩析)が当時は行われており,
塩析した上で試験をすればTRIEPPは
エーテル抽出後であっても検出されると主張するが,
当時の三重県衛生研究所の試験において塩析が
行われた形跡はうかがわれず,所論は前提を欠くものである。
また,対照検体からはTRIEPPが検出されている点についても,
当審に提出された検察官の意見書の添付資料等によれば,
PETPがエーテル抽出された後にTRIEPPを生成して
検出されたものと考えられる旨の原判断は
合理性を有するものと認められる。
以上によれば,証拠群3は,
本件使用毒物がニッカリンTであることと
何ら矛盾する証拠ではなく,申立人がニッカリンTを
本件前に自宅に保管していた事実の情況証拠としての価値や,
各自白調書の信用性に影響を及ぼすものではないことが明らかであるから,
証拠群3につき刑訴法435条6号該当性を否定した
原判断は正当である。
また,本件ぶどう酒の開栓方法等に係る実験結果報告書等の
その余の4つの証拠群についても,
上記最高裁決定の判示のとおり同号該当性は認められず,
同旨の原判断は正当である。
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