リラックス法学部 憲法判例憲法判例 「逆転」事件(表現の自由とプライバシー権)の概要と判決の趣旨をわかりやすく解説

 

憲法判例 「逆転」事件(表現の自由とプライバシー権)

(最判平成6年2月8日)

事件番号  平成1(オ)1649

 

Xは、米国の兵隊と口論になり、

殴り合いのケンカに発展し、

傷害罪で懲役3年の実刑判決を受けました。

 

その後、Xは仮出所し、

就職をし、結婚もして、前科を周囲に知られることもなく

平穏な暮らしをしていました。

 

ところがXの裁判の際に、陪審員をしていたYが、

その傷害事件を題材にした

ノンフィクション作品「逆転」を執筆し、

Xがその作品で実名で登場しており、

この作品が発表されたことで、

Xの前科の事実が公表され、

Xは、プライバシー権を侵害され

精神的苦痛をこうむったとして、Yに対して慰謝料を請求しました。

 

 

最高裁は、

「前科、犯罪歴にかかわる事実は、

これを公表されない利益が法的保護に値する場合があり、

それと同時に、公表が許される場合もある」

(つまりプライバシー権も尊重されるが、

表現の自由もまた尊重される

 

「前科等にかかわる事実を実名で著作物で公表したことが

不法行為になるかどうかは、その者の生活状況のみならず、

対象とする事件自体の歴史的、社会的意義、当事者の重要性、

その者の社会的活動及び影響力について、

著作物の目的、性格等に照らして、

実名使用の意義及び必要性を併せて判断するものである」

とした上で、

前科等にかかわる事実を公表されない

法的利益が優越するとされる場合は、

その公表によって被った

精神的苦痛の賠償を求めることが

できるものといわなければならない」として、

損害賠償請求を認めた控訴審判決を支持しました。

 

このようにプライバシー権も、表現の自由も

どちらも尊重されるべき権利ではあり、

両者の権利に一概に優劣をつけることができるものではなく、

これを判断する際は、当事者の事情や、

作品の作風、扱う題材や、歴史的、社会的背景などもふまえた上で、

どちらが尊重されるべきかを判断するということとなります。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

 

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