憲法判例 夕刊和歌山時事事件
(最判昭和44年6月25日)
事件番号 昭和41(あ)2472
「夕刊和歌山時事」の編集・発行人のXが、
他紙の「和歌山特だね新聞」の記者らが、
市役所職員に恐喝まがいの
取材の仕方をしたという記事を
「夕刊和歌山時事」に掲載し、
Xの行為が名誉毀損にあたるとして
起訴されました。
刑法の230条の2に名誉毀損罪について、
次のような規定があります。
第二百三十条の二
前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、
その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、
事実の真否を判断し、
真実であることの証明があったときは、
これを罰しない。
すなわち、230条の名誉棄損罪の規定では、
公然と事実を摘示し、
人の名誉を毀損した者は、
その事実の有無にかかわらず罰すると
規定されていますが、230条の2によると、
公共の利害に関する事実で、もっぱら公益を図る目的で、
真実であることを証明すれば、罰せられないことになります。
しかし、真実であることの証明は、
かなりハードルの高いものです。
この事件においても、
真実である証明ができませんでしたが、
最高裁は次のような判断をしました。
「真実であることの証明がない場合でも、
行為者が真実であると誤信し、
それが確実な資料・根拠に照らして、
相当の理由があるときは、
犯罪の故意はなく、罪は成立しない」
このように「相当の理由」
による免責を認めることにより、
表現の自由の萎縮効果に配慮した
判断をしました。
その後、多くの名誉棄損罪の裁判で、
「相当の理由」について
検討されるようになりました。
裁判所は「確実な資料、根拠」を厳格に解釈し、
「相当の理由」は否定されることが多い
傾向にあるようです。
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