占有の訴えとは?
法的な根拠と無関係に、
特定のものを占有しているという事実だけで
発生する物権「占有権」を
根拠に主張できる訴えを説明いたします。
次の三つがあります。
①占有保持の訴え
②占有保全の訴え
③占有回収の訴え
初めは、「ナントカの訴え」と
名前を覚えようとがんばらなくても結構です。
まずはそんな事よりも占有権を根拠に
どんな訴えができるのか内容をしっかりイメージ
していただければと思います。
①占有保持の訴え
こちらは占有が侵害されている時に、
占有を侵害しているものに妨害の停止及び
損害賠償を請求できると
いうものです。
②占有保全の訴え
法律の世界では「保全」
という言葉がよく出てきますが、
だいたい「将来に備えて手を打っておく」
というニュアンスをイメージしておくと
理解しやすいかと思います。
ということで、こちらは占有を妨害されそうな時に、
妨害の予防または損害賠償の担保の提供を請求できる
というものです。
「または損害賠償の担保の提供」
になっているところを注意しましょう。
(他の2つは「及び損害賠償」)
③占有回収の訴え
こちらは占有を奪われた時に、
物の返還及び損害賠償を請求できるというものです。
と、このように占有権に基いて
これらの訴えを提起できるわけですが、
「この3つどこかで見たな」
とピンピンきたかと思いますが、
物権的請求権の3つと対応しています。
物権的返還請求権⇔占有回収の訴え
物権的妨害排除請求権⇔占有保持の訴え
物権的妨害予防請求権⇔占有保全の訴え
物権的請求権の説明はこちらをご参照ください↓
というわけで、
占有の訴えについて説明して参りましたが、
最後にそれぞれの条文を掲載しますので、
さらに一歩進みたい方は
それぞれの訴えがいつまでできるのか
というところにも注目してみてください。
(資格試験受験者の方は必ずチェックしてください)
(占有の訴え)
第百九十七条
占有者は、次条から第二百二条までの規定に従い、
占有の訴えを提起することができる。
他人のために占有をする者も、同様とする。
(占有保持の訴え)
第百九十八条
占有者がその占有を妨害されたときは、
占有保持の訴えにより、
その妨害の停止及び損害の賠償を請求することができる。
(占有保全の訴え)
第百九十九条
占有者がその占有を妨害されるおそれがあるときは、
占有保全の訴えにより、
その妨害の予防又は損害賠償の担保を
請求することができる。
(占有回収の訴え)
第二百条
占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、
その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。
2 占有回収の訴えは、
占有を侵奪した者の特定承継人に対して
提起することができない。
ただし、その承継人が侵奪の事実を
知っていたときは、この限りでない。
(占有の訴えの提起期間)
第二百一条 占有保持の訴えは、
妨害の存する間又はその消滅した後
一年以内に提起しなければならない。
ただし、工事により占有物に損害を生じた場合において、
その工事に着手した時から一年を経過し、
又はその工事が完成したときは、
これを提起することができない。
2 占有保全の訴えは、妨害の危険の存する間は、
提起することができる。この場合において、
工事により占有物に損害を生ずるおそれがあるときは、
前項ただし書の規定を準用する。
3 占有回収の訴えは、占有を奪われた時から
一年以内に提起しなければならない。
(※「前項ただし書の規定を準用」とは、
工事に着手した時から一年経過or工事が完成
したら提起できないということです)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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