リラックス法学部 > 初学者の部屋 > 種類債権の特定と危険負担の債権者主義ついて解説
債権には、
特定物債権と種類債権(不特定物債権)があり、
特定物債権は当事者が物の個性を重視したもの、
いわゆる「それしかない物」で、
種類債権(不特定物債権)は一定の種類、
一定の量のいわゆる「換えのきく物」
というものでした。
今回は種類債権の種類の特定について
説明していきます。
種類債権の場合、債務者は同種の物が市場に存在する限り、
調達義務を負いますが、種類債権が特定すると、
その義務から解放されます。
では、どのような時に「種類債権の特定」
となるかを説明していきます。
(種類債権)
第四百一条 債権の目的物を種類のみで指定した場合において、
法律行為の性質又は当事者の意思によって
その品質を定めることができないときは、
債務者は、中等の品質を有する物を給付しなければならない。
2 前項の場合において、
債務者が物の給付をするのに必要な行為を完了し、
又は債権者の同意を得てその給付すべき物を指定したときは、
以後その物を債権の目的物とする。
と、401条2項は、種類債権の特定を規定しています。
では「債務者が物の給付をするのに必要な行為」
とはどのような場合かと言いますと、
債務の態様によって異なります。
債権者の住所で債務を履行する(物を渡す)
「持参債務」の場合は、
現実に債権者の住所に持参して提供したときに
種類の特定となります。
債務者の住所地で履行する「取立債務」の場合は、
債務者が目的物を分離し、引渡しの準備をした上で、
債権者に通知した時点で種類の特定となります。
要は、酒屋さんが
注文を受けていたビール1ダースを準備し、
「準備できてますので取りに来てくださいね」
と債権者に通知した時ということです。
では、種類の特定が発生すると
どのような効果があるのかといいますと、
目的物の所有権が買主に移転します。
となると、ビールの所有権は注文者のものとなり、
酒屋さんは注文者さんのビールを
預かっているという事になり、
善管注意義務が発生します。
善管注意義務とは自分の物以上に
注意して管理する義務です。
そして、危険負担が債権者主義となります。
「危険負担が債権者主義」とは
債務者の責めに帰すことのできない事由で
給付が不能となった場合に、債権者が危険を負担するという事です。
難しい言葉が続いたので噛み砕きます。
つまり、酒屋さんの責めに帰すことのできない事由、
例えば自然災害で、ビール1ダースが粉々になった場合、
注文者はビール1ダース分の代金を払う債務が消滅せず、
酒屋さんは粉々のビール1ダースを引き渡せば、
代金をもらえるということです。
種類債権の特定前であれば、酒屋さんは、
他の破損していないビール1ダースを用意を準備して
引き渡さなければならないという事です。
これが種類の特定の効果です。
なお、特定物の場合は、はじめから債務の目的物が
特定していますので危険負担は債権者主義
となります。
(債権者の危険負担)
第五百三十四条
特定物に関する物権の設定又は移転を
双務契約の目的とした場合において、
その物が債務者の責めに帰することができない事由によって
滅失し、又は損傷したときは、
その滅失又は損傷は、債権者の負担に帰する。
2 不特定物に関する契約については、
第四百一条第二項の規定によりその物が確定した時から、
前項の規定を適用する。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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