リラックス法学部 判例集 >民法  時効(144条~156条)判例集

 

(時効の効力)

第百四十四条 時効の効力は、その起算日にさかのぼる。

 

民法144条関連判例

・時効の起算点は必ず取得時効の基礎たる事実の開始した時点とし、

時効援用者が時効の起算点を選択する事はできない。

 (最判昭35・7・27)

 

(時効の援用)

第百四十五条 時効は、当事者が援用しなければ、

裁判所がこれによって裁判をすることができない。

 

民法145条関連判例

・債権の消滅時効は援用することによって

消滅するものでなく

消滅時効の完成とともに当然に消滅する。

援用は債権がすでに時効によって

消滅したことを主張する訴訟上の

防御方法にすぎない。

(大判昭9・10・3)

 

・本条は当事者の意思に反して、

強制的に時効の利益を受けさせる事を

不可としたものである。

少なくとも取得時効においては、

直接時効の利益を受ける者は裁判上、

裁判外問わず何時でもこれを援用する事ができ、

いったん援用があると、時効による

権利の取得は確定不動のものとなる。

(大判昭10・12・24)

 

・債権者が時効を援用しないで敗訴し、

判決が確定した後、別訴において

当該債権が時効により消滅していたという事を主張できない。

(大判昭14・3・29)

 

・物上保証人も債務の消滅時効を援用できる。

債権者は、その債務者(物上保証人)が

他の債権者に対して負担する債務につき、

自己の債権を保全する必要の限度内で、

債務者に代位してその消滅時効を援用する事ができる。

(最判昭43・9・26)

 

・土地の所有権を時効取得すべき者から、

その土地上に同人の所有する

建物を賃借している者は、この土地の取得時効について

直接利益を受ける者ではないから、

この土地の取得時効を援用することはできない。

(最判昭44・7・15)

 

・抵当権が設定された

不動産の譲り受けた第三者は、

抵当権の被担保債権の消滅時効を

援用することができる。

(最判昭48・12・14)

 

・仮登記担保権が設定された

不動産を譲り受けた第三者は、

その仮登記担保権の非担保債権の

消滅時効を援用できる。

(最判昭60・11・26)

 

・売買予約に基づく所有権移転請求権保全の

仮登記より後に抵当権を有した者は、

その仮登記された予約完結権の消滅時効を援用できる。

(最判平2・6・5)

 

・売買予約に基づく所有権移転請求権保全の

仮登記のされた不動産につき、

所有権移転登記を経由した第三取得者は、

予約完結権の消滅時効を援用できる。

(最判平4・3・19)

 

・詐害行為の受益者は、詐害行為取消権を行使している

債権者の債権(非担保債権)の消滅により、

直接利益を受ける者にあたるので、

その被担保債権の消滅時効を援用する事ができる。

(最判平10・6・22)

 

・後順位抵当権者は先順位抵当権者の

被担保債権の消滅時効を援用できない。

(最判平11・10・21)

 

・被相続人の占有によって

取得時効が完成した場合、共同相続人の一人は、

自己の相続分の限度においてのみ

取得時効を援用できるにすぎない。

 (最判平13・7・10)

 

・債務につき消滅時効が完成後、

債務者が債務の承認をした以上、

時効完成を知らなかった場合でも、

以後その消滅時効を援用することは

信義則に反するので、できない。

 (最大判昭41・4・20)

 

・主債務の消滅時効完成後に、

主債務者が当該債務の承認をし、保証人がこれを知り、

保証債務を承認した場合は、

保証人がその後に主債務の消滅時効を

援用することは信義則に照らしてできない。

(最判昭44・3・20)

 

・債務者が消滅時効の完成後に

債務の承認をした場合でも、再度時効期間が経過し、

時効が完成した場合は、債務者は

時効を援用することができる。

(最判昭45・5・21)

 

(時効の利益の放棄)

第百四十六条 時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。

 

民法146条関連判例

主たる債務者が時効利益を放棄しても、

保証人に対しては効力を生じない。

(大判大5・12・25)

(リラックスヨネヤマコメント…

保証人はなお消滅時効を主張できます)

 

(時効の中断事由)

第百四十七条 時効は、次に掲げる事由によって中断する。

一 請求

二 差押え、仮差押え又は仮処分

三 承認

 

 

民法147条関連判例

・債務者がその債務を記載した

決算報告書を作成し、債権者に提示して

その内容の説明を求めたり、

記載内容の確認をしていた時は、

本条三号の承認があったものとされる。

(最判昭59・3・27)

 (リラックスヨネヤマコメント…

債務者は債権の前提を認めて

質疑に応答しているので

承認にあたります。)

 

・物上保証人が債務者に対して

被担保債権の存在を承認しても、

本条三号の承認にはあたらない。

物上保証人に対する関係においても

時効中断の効力を生じない。

(最判昭62・9・3)

(リラックスヨネヤマコメント…

つまり物上保証人が債務を承認したとしても何の効果も生じません。)

 

・仮差押えによる時効の中断の効力は、

仮差押解放金の供託により

仮差押執行が取り消された場合でも、

なお継続する。

(最判平6・6・21)

 

 

・債務者の承認により非担保債権について

生じた消滅時効中断の効力を

物上保証人が否定する事は、

担保権の付従性に抵触するので、許されない。

(最判平7・3・10)

 

・他の抵当権者の申し立てによる

競売手続において債権の届出をして

債権の一部の配当をを受けただけでは、

本条の差押えその他の中断事由にあたらない。

(最判平8・3・28)

 

(裁判上の請求)

第百四十九条 裁判上の請求は、

訴えの却下又は取下げの場合には、時効の中断の効力を生じない。

 

 

 民法149条関連判例

・所有権に基づく登記手続請求権の訴えにおいて、

被告の自己に所有権がある旨の主張が

認められた場合はこの主張は

裁判上の請求に準ずるものとして、

原告の取得時効を中断する

効力を有する。(最大判昭43・11・13)

 

・訴えの提起による

時効中断の効力が生ずる時期は、訴状を裁判所に提出した時である。

訴状が相手方に送達された時ではない。

(大判大4・4・16)

 

・相手方の提起した債務不存在確認の訴えに対して、

請求棄却の判決を求めたときも、裁判上の請求として、

時効の中断の効力を生じる。

(大連判昭14・3・22)

 

・債務者が受益者を相手に詐害行為取消しの訴えの提起は、

その前提の債権の消滅時効を中断しない。

(最判昭37・10・12)

 

・抵当権設定登記請求訴訟において、

債権者が請求棄却を求め、

被担保債権の存在を主張した時は、

その主張は裁判上の請求に準ずる

ものとして時効中断の効力を有する。

(最判昭44・11・27)

 

(承認)

第百五十六条 時効の中断の効力を生ずべき承認をするには、

相手方の権利についての処分につき

行為能力又は権限があることを要しない。

 

 

民法156条関連判例

・準禁治産者でも保佐人の同意なく

債務の承認をする事ができる。

(大判大7・10・9)

(リラックスヨネヤマコメント…

消費者である準禁治産者が受領した金員は、

反証のない限り、無益な事に消費し、 

現存利益はないと推測するのが常理である。

(大判昭14・10・26)

という判例と比較してみましょう。

裁判所は準禁治産者(被保佐人)が、

お金をまともに使う能力はないけれども、

債務の承認をする能力はあると

みているようです。)

 

・訴訟上相殺の主張をすることによって、

受働債権につき承認があったものと

認められた以上、

その後相殺の主張が撤回されても、

すでに生じた承認の効果は失われない。

(最判昭35・12・23)

 

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