リラックス法学部 >憲法をわかりやすく解説 >条約は国会の承認を得られない場合どうなるか?条約は違憲審査の対象になるのか?わかりやすく解説
憲法73条3項は、条約の締結は内閣の権能としながら、
国会の承認を必要としています。
憲法73条3項
条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、
国会の承認を経ることを必要とする。
条約は通常は、交渉、調印、批准の順で締結されますが、
国会の事前の承認を得ることができない場合は、
条約の批准をすることができません。
事後の承認が得られなかった場合の扱いは諸説あり、
国会の承認権が相手国に周知の場合、
国際法上の効力を否定できるとする条件付無効説、
国際法上の効力は否定できないが、
条約の締結手続が憲法上の明白かつ
基本的に重要な規定に違反するときは国内法的に
実施することができないとする
国際法・国内法二分説といったものがあります。
「条約」も違憲審査の対象になるのか?
条約とは、国家間において国際法に
基いてされる国際的合意ですが、
条約がそのまま法的効力を有する事に
争いはありません。
違憲審査権とは、一切の法律、命令、規則、処分が
憲法に適合するかどうかを決定する
最高裁判所が有する権限です。
(憲法に適合しないと決定したものは
「無効」な国家行為となります。)
条約も違憲審査の対象となるかが問題となります。
条約と憲法の形式的効力の優劣については争いがあり、
これに関連して条約が
違憲審査の対象となるのか否かについて、
条約優位説、憲法優位説という見解に分かれます。
簡単に言えば、
「条約と憲法はどっちが上なのか?
条約が上なら違憲審査はできないし、
憲法が上なら違憲審査はできるという事になる」
という見解の違いなわけですが、
じっくりみていきましょう。
条約優位説
文字通り、条約の方が憲法より優位であると考え、
条約は違憲審査の対象となることはないと考える立場です。
この立場への批判としては、
法律の成立よりも簡易の手続きで成立する条約が
憲法よりも優位に立つならば、
条約によって憲法が改正されるのと
同様の結果を生み出す事ができ、
国民主権や硬性憲法の建前に反すると
いうものが考えられます。
憲法優位説
こちらも文字通り、
憲法が条約より優位に立つと考える立場です。
ただし、こちらの場合は、
条約を違憲審査することができるとする「肯定説」と、
憲法が優位に立つからといって
必ずしも条約を違憲審査できると考えるわけではないという
「否定説」という考え方もあります。
判例は、憲法優位説に立ち、
「高度の政治性持つ条約には、
一見極めて明白に違憲無効と認められない限り、
裁判所の司法審査権の範囲外のものである」
としました。
まあ、逆に言えば、
「一見極めて明白に違憲無効な条約であれば、
違憲審査の対象となる」
と解釈されています。
という事で、条約に関しては、
憲法の方が優位に立ちながらも、
必ずしもすべての条約が違憲審査の対象となるわけではなく、
極めて違憲無効な条約だけが違憲審査の対象となる
とおさえておいてください。
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