キャッシュアウトにおける株式の取得価格

(平成28年7月1日最高裁)

事件番号  平成28(許)4

 

この裁判では、

キャッシュアウトにおける株式の取得価格について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

株式会社の株式の相当数を

保有する株主(以下「多数株主」という。)が

当該株式会社の株式等の公開買付けを行い,

その後に当該株式会社の株式を全部取得条項付種類株式とし,

当該株式会社が同株式の全部を取得する取引においては,

多数株主又は上記株式会社(以下「多数株主等」という。)と

少数株主との間に利益相反関係が存在する。

 

しかしながら,独立した第三者委員会や専門家の意見を聴くなど

意思決定過程が恣意的になることを排除するための措置が講じられ,

公開買付けに応募しなかった株主の保有する上記株式も

公開買付けに係る買付け等の価格と同額で取得する旨が明示されているなど

一般に公正と認められる手続により上記公開買付けが行われた場合には,

上記公開買付けに係る買付け等の価格は,上記取引を前提として

多数株主等と少数株主との利害が適切に調整された結果が

反映されたものであるというべきである。

 

そうすると,上記買付け等の価格は,

全部取得条項付種類株式の取得日までの期間は

ある程度予測可能であることを踏まえて,

上記取得日までに生ずべき市場の一般的な価格変動についても

織り込んだ上で定められているということができる。

 

上記の場合において,裁判所が,上記買付け等の価格を

上記株式の取得価格として採用せず,

公開買付け公表後の事情を考慮した補正をするなどして

改めて上記株式の取得価格を算定することは,

当然考慮すべき事項を十分考慮しておらず,

本来考慮することが相当でないと認められる要素を考慮して

価格を決定するものであり,原則として,

裁判所の合理的な裁量を超えたものといわざるを得ない。

 

したがって,多数株主が株式会社の株式等の公開買付けを行い,

その後に当該株式会社の株式を全部取得条項付種類株式とし,

当該株式会社が同株式の全部を取得する取引において,

独立した第三者委員会や専門家の意見を聴くなど

多数株主等と少数株主との間の利益相反関係の存在により

意思決定過程が恣意的になることを排除するための措置が講じられ,

公開買付けに応募しなかった株主の保有する上記株式も

公開買付けに係る買付け等の価格と

同額で取得する旨が明示されているなど

一般に公正と認められる手続により上記公開買付けが行われ,

その後に当該株式会社が上記買付け等の価格と同額で

全部取得条項付種類株式を取得した場合には,

上記取引の基礎となった事情に予期しない変動が

生じたと認めるに足りる特段の事情がない限り,

裁判所は,上記株式の取得価格を上記公開買付けにおける

買付け等の価格と同額とするのが相当である。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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