司法警察員が捜索差押の際にした写真撮影と準抗告

(平成2年6月27日最高裁)

事件番号  平成2(し)9

 

この裁判では、

司法警察員が捜索差押の際にした写真撮影と準抗告について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

検証とは、視覚、聴覚等五感の働きによって物、場所、

人等の存在、形状、作用等を認識する作用であり、

検証に際して行われる写真撮影は、

検証の結果をフィルムに収録する行為といえよう。

 

このような行為を捜査機関が行う場合には

原則として令状を必要とする(刑訴法218条1項)。

 

したがって、人の住居に立ち入って

捜索差押許可状を執行するに際し、

あわせてその現場において写真撮影を行うためには、

原則として検証許可状が必要となる。 

 

しかし、検証許可状を請求することなく、

捜索差押手続の適法性を担保するため

その執行状況を写真に撮影し、あるいは、

差押物件の証拠価値を保存するため発見された場所、

状態においてその物を写真に撮影することが、

捜査の実務上一般的に行われている。

 

このような撮影もまた検証と解されるべきものであるが、

捜索差押に付随するため、捜索差押許可状により

許容されている行為であると考えられる。

 

これに対して、本件のように、

捜索差押許可状に明記されている物件以外の物を撮影した場合には、

捜索差押手続に付随した検証行為とはいえないので、

本来は検証許可状を必要とするものであり、

その令状なしに写真撮影したことは

違法な検証行為といわざるを得ないが、

検証について刑訴法430条の準抗告の規定の

適用がないことは条文上明らかであって、

この点に関する準抗告は現行刑訴法上

認められていないものと解するほかない。

 

もっとも、物の外形のみの写真撮影に止まらず、例えば、

捜索差押が行われている現場で捜索差押許可状に

明記された物件以外の日記帳の内容を逐一撮影し、

収賄先献金先等を記載したメモを撮影するなど、

捜査の帰すうに重大な影響を及ぼす可能性のある、

あるいは重大事件の捜査の端緒となるような文書の内容等について、

検証許可状なくして写真撮影が行われたような場合を考えると、

検証には刑訴法430条の準抗告の規定の適用がないということで

このような行為を容認してしまうことは、

適正な刑事手続を確保するという観点から問題があるように思われる。

 

すなわち、このような場合、実質的にみれば、

捜査機関が日記帳又はメモを差し押さえて

その内容を自由に検討できる状態に

置いているのと同じであるから、

写真撮影という手段によって実質的に日記帳又は

メモが差し押さえられたものと観念し、

これを「押収に関する処分」として

刑訴法430条の準抗告の対象とし、

同法426条2項によりネガ及び写真の廃棄又は

引渡を命ずることができるとする考え方もあり得よう。

 

しかしながら、本件の写真撮影は、

印鑑等四点の物の外形のみを撮影したものであって、

右のような実質上の押収があったか否かを

議論するまでもない事案であるから、

刑訴法430条の準抗告の対象とならないとした

原決定の結論は相当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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