刑罰法規の解釈(旧鳥獣保護法の「捕獲」の解釈)
(平成8年2月8日最高裁)
Xは、クロスボウを使用し、マガモまたはカルガモを狙って
矢を4本発射しましたが、いずれも命中しませんでした。
Xの行為は、旧鳥獣保護法1条ノ4第3項を受けた環境庁告示(43号3号リ)
弓矢を使用する方法による狩猟鳥獣の捕獲を禁止する行為にあたるとして、
起訴されました。
Xの撃った矢は4本とも外れたので、
Xは「捕獲」していないと主張しましたが、
一審は有罪とし、控訴も棄却され、
上告をしました。
刑法は、罪刑法定主義の派生原理で
類推解釈が禁止されているので、
「捕獲」という言葉の解釈がポイントとなりました。
最高裁判所の見解
最高裁は、「捕獲」の解釈について、
「矢を射かけた行為について、矢が外れたため
鳥獣を自己の実力支配内に入れられず、かつ、
殺傷するに至らなくても、
同法が禁止する弓矢を使用する方法による「捕獲」に当たる」
とし、この条項についての「捕獲」には、
「鳥獣を捕えようとする行為」も含まれるという解釈をしました。
まとめ
前述のとおり、刑法は、罪刑法定主義の派生原理では、
類推解釈が禁止されています。
本判決の後、平成14年に旧鳥獣保護法が全面改正され、
未遂を処罰する規定が置かれました。
後追いでこの立法がされた事により、
本判決の「捕獲」の解釈が、
類推解釈ではないかという疑いが強くなるところです。
本判決は、未遂にあたる場合を、
規定なしに処罰した事になり、
本来してはいけない判断と考えられます。
本裁判を無罪にし、それを受けて立法を行うのが、
本来の判例と立法の関係と考えられるところです。
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