衆参同日選挙事件
昭和62年3月25日名古屋高裁
1986年6月2日、中曽根内閣は衆議院を解散し、
衆議院議員総選挙と、
参議院議員の通常選挙が、
同年7月6日の同日に実施されました。
愛知県の有権者のXは、
衆議院議員総選挙の日において
参議院議員の通常選挙の投票も行うという
いわゆる衆参同日選挙をもたらした
内閣総理大臣による衆議院解散権の行使が
違憲無効であること、及び、
右同日選挙禁止規定を欠く公職選挙法自体ないし
右同日選挙を回避しない同法の運用が違憲であることを
理由とする衆議院議員総選挙の無効を
請求する訴えを提起しました。
裁判所は、
「衆議院の解散が、極めて政治性の高い
国家統治の基本に関する行為であることは
多言を要しないところであって、かかる行為について、
その法律上の有効無効を審査することは、
司法裁判所の権限の外にあるものと解すべきである。」
「衆参両院の同日選挙によつて、
選挙活動や政党間の政策論争が輻輳、激化し、
或いは情報が多量化するであろうことは、
見易いところとしても、そのため選挙民が
身近かな衆議院議員の選出に注意を注ぐ結果となり、
参議院議員にどのような人物がふさわしいかについて
注意を注がないことになつたり(その逆も存在しうるという)、
情報過多、殊に衆院選に関する情報過剰の波の中に選挙民が理没し、
参院選は存在感を失つて了って、 選挙民は適任者選択の困難に陥る、
との原告ら主張のような情況の発生、招来を認めるに足る具体的、
客観的かつ明白な根拠は見出し難い。」
「総選挙の期日の決定は、
高度の政治判断事項である解散行為と密接に関連し、
これに随伴するものであるとともに、
当該時期における国政の運営、政治日程などとの
不可分の配慮を欠きえない政治的判断事項といわねばならないが、
さりとて、衆議院の解散権の行使のように、
直接国家政治の基本に関する極めて
高度な政治性ある行為とまでは
なし難いと解される」ので、
司法審査の対象外となりうるとし、
「選挙期日の決定については憲法四七条に
「選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、
法律でこれを定める」と規定されており、
選挙に関する平等、守秘、自由等の基本理念
(同法一五条 一、三、四項、四四条但書参照)を
侵すこととなるものでない限り、これを立法府において
自由に定めうると解されること、
同日選が民意を反映せず憲法の趣旨に反したものであると
いい難いことは前認定のとおりであることに鑑みると、
結局公選法に同日選禁止規定を設けるか否かは
立法政策の問題に帰するものであるというべく、
従つて、同規定を欠く現行公選法が違憲である、或いは、
同日選を回避しない公選法の運用が違憲である、
となし難いことは明らかであるといわねばならない。」
としました。
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