前訴と訴訟物を異にする後訴の提起が信義則上許されないとされた事例

(昭和51年9月30日最高裁)

事件番号  昭和49(オ)331

 

この裁判は、

前訴と訴訟物を異にする後訴の提起が

信義則上許されないとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

原審が適法に確定した事実及び本件記録によれば、

(一)昭和23年6月ごろ、上告人らの先代訴外亡Dの所有する

本件各土地について自作農創設特別措置法による買収処分がされ、

かつ昭和24年7月ごろ、被上告人らの先代訴外亡Eに対する

売渡処分がおこなわれたところ、

右Dの死後その相続人の一人である上告人Aは、

右売渡処分後の昭和32年5月に、右Eとの間で、

右上告人が本件各土地を買い受ける旨の売買契約が成立したとして、

右Eの死後、その子である被上告人B1、同B2及び

妻である訴外亡Fに対し、右各土地について右上告人のため、

農地法所定の許可申請手続及び許可を条件とする

所有権移転登記手続等を求める訴(以下、前訴という。)を提起し、

その請求棄却の判決が最高裁判所昭和40年(オ)第791号

同41年12月2日第二小法廷の上告棄却の判決の言渡により確定したこと、

(二)ところが、翌昭和四二年四月に右Dの共同相続人である上告人らが

本訴を提起し、前記買収処分の無効等を理由として、

右E及び右訴訟係属中に死亡した右Fの相続人である

被上告人B1、同B2並びに右訴訟係属中に右被上告人らから

本件第三土地の売渡をうけた被上告人B3紙業株式会社のためにされた

本件各土地についての各所有権移転登記の抹消登記手続に代る

所有権移転登記手続等を請求していること、

(三)ところで、上告人Aは、前訴においても

前記買収処分が無効であることを主張し、

買収処分が無効であるため本件各土地は

当然その返還を求めうべきものであるが、

これを実現する方法として、土地返還約束を内容とする、

実質は和解契約の性質をもつ前記売買契約を締結し、

これに基づき前訴を提起したものである旨を

一貫して陳述していたこと、

(四)右上告人は、本訴における主張を前訴で請求原因として

主張するにつきなんら支障はなかったことが、明らかである。

 

右事実関係のもとにおいては、

前訴と本訴は、訴訟物を異にするとはいえ、ひっきょう、

右Dの相続人が、右Eの相続人及び右相続人から譲渡をうけた者に対し、

本件各土地の買収処分の無効を前提として

その取戻を目的として提起したものであり、

本訴は、実質的には、前訴のむし返しというべきものであり、

前訴において本訴の請求をすることに支障もなかったのにかかわらず、

さらに上告人らが本訴を提起することは、

本訴提起時にすでに右買収処分後約20年も経過しており、

右買収処分に基づき本件各土地の売渡をうけた

右E及びその承継人の地位を不当に長く不安定な状態に

おくことになることを考慮するときは、

信義則に照らして許されないものと解するのが相当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説


行政書士試験にわずか147日で合格した勉強法

行政書士受験生にオススメのAmazon Kindle Unlimitedで読める本


スポンサードリンク

関連記事