都市計画と裁量権の範囲

(平成18年11月2日最高裁)

事件番号  平成16(行ヒ)114

 

この裁判では、

都市計画と裁量権の範囲について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

都市計画法は,都市計画について,

健康で文化的な都市生活及び機能的な

都市活動を確保すべきこと等の基本理念の下で(2条),

都市施設の整備に関する事項で当該都市の健全な発展と

秩序ある整備を図るため必要なものを

一体的かつ総合的に定めなければならず,

当該都市について公害防止計画が定められているときは

当該公害防止計画に適合したものでなければならないとし(13条1項柱書き),

都市施設について,土地利用,交通等の現状及び将来の見通しを勘案して,

適切な規模で必要な位置に配置することにより,円滑な都市活動を確保し,

良好な都市環境を保持するように定めることとしているところ(同項5号),

このような基準に従って

都市施設の規模,配置等に関する事項を定めるに当たっては,

当該都市施設に関する諸般の事情を総合的に考慮した上で,

政策的,技術的な見地から判断することが

不可欠であるといわざるを得ない。

 

そうすると,このような判断は,

これを決定する行政庁の

広範な裁量にゆだねられているというべきであって,

裁判所が都市施設に関する都市計画の決定又は

変更の内容の適否を審査するに当たっては,

当該決定又は変更が裁量権の行使としてされたことを前提として,

その基礎とされた重要な事実に誤認があること等により

重要な事実の基礎を欠くこととなる場合,又は,

事実に対する評価が明らかに合理性を欠くこと,

判断の過程において考慮すべき事情を考慮しないこと等により

その内容が社会通念に照らし著しく妥当性を

欠くものと認められる場合に限り,裁量権の範囲を逸脱し又は

これを濫用したものとして違法となるとすべきものと

解するのが相当である。

 

そうすると,本件鉄道事業認可の前提となる

都市計画に係る平成5年決定を行うに当たっては,

本件区間の連続立体交差化事業に伴う騒音,振動等によって,

事業地の周辺地域に居住する住民に健康又は生活環境に係る

著しい被害が発生することのないよう,被害の防止を図り,

東京都において定められていた公害防止計画である

東京地域公害防止計画に適合させるとともに,

本件評価書の内容について十分配慮し,

環境の保全について

適正な配慮をすることが要請されると解される。

 

本件の具体的な事情としても,公害等調整委員会が,

裁定自体は平成10年であるものの,

同4年にされた裁定の申請に対して,

小田急線の沿線住民の一部につき平成5年決定以前の騒音被害が

受忍限度を超えるものと判定しているのであるから,

平成5年決定において本件区間の構造を定めるに当たっては,

鉄道騒音に対して十分な考慮をすることが

要請されていたというべきである。

 

そうすると,平成5年決定は,

本件区間の連続立体交差化事業に伴う騒音等によって

事業地の周辺地域に居住する住民に健康又は

生活環境に係る著しい被害が発生することの防止を図るという観点から,

本件評価書の内容にも十分配慮し,

環境の保全について適切な配慮をしたものであり,

公害防止計画にも適合するものであって,

都市計画法等の要請に反するものではなく,

鉄道騒音に対して十分な考慮を

欠くものであったということもできない。

 

したがって,この点について,

平成5年決定が考慮すべき事情を

考慮せずにされたものということはできず,また,

その判断内容に明らかに合理性を欠く点があるということもできない。

 

なお,被上告参加人は,平成5年決定に至る検討の段階で,

本件区間の構造について三つの方式の比較検討をした際,

計画的条件,地形的条件及び事業的条件の3条件を

考慮要素としており,環境への影響を比較しないまま,

本件高架式が優れていると評価している。

 

しかしながら,この検討は,工期・工費,

環境面等の総合的考慮の上に立って

高架式を適切とした本件調査の結果を踏まえて行われたものである。

 

加えて,その後,本件高架式を採用した場合の環境への影響について,

本件条例に基づく環境影響評価が行われ,被上告参加人は,

この環境影響評価の結果を踏まえた上で,

本件高架式を内容とする平成5年決定を行っているから,

平成5年決定が,その判断の過程において

考慮すべき事情を考慮しなかったものということはできない。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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