株式等が相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されるか

(平成26年2月25日最高裁)

事件番号  平成23(受)2250

 

この裁判では、

株式等が相続開始と同時に

当然に相続分に応じて分割されるかについて

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

株式は,株主たる資格において

会社に対して有する法律上の地位を意味し,

株主は,株主たる地位に基づいて,

剰余金の配当を受ける権利

(会社法105条1項1号),

残余財産の分配を受ける権利(同項2号)などの

いわゆる自益権と,株主総会における議決権(同項3号)などの

いわゆる共益権とを有するのであって,

このような株式に含まれる権利の内容及び性質に照らせば,

共同相続された株式は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて

分割されることはないものというべきである。

 

本件投信受益権のうち,

委託者指図型投資信託(投資信託及び投資法人に関する法律2条1項)に係る

投資信託受益権は,口数を単位とするものであって,

その内容として,法令上,償還金請求権及び

収益分配請求権(同法6条3項)という金銭支払請求権のほか,

信託財産に関する帳簿書類の閲覧又は

謄写の請求権(同法15条2項)等の

委託者に対する監督的機能を有する権利が規定されており,

可分給付を目的とする権利でないものが含まれている。

 

このような上記投資信託受益権に含まれる

権利の内容及び性質に照らせば,

共同相続された上記投資信託受益権は,

相続開始と同時に当然に相続分に応じて

分割されることはないものというべきである。

また,本件投信受益権のうち,投資信託受益権は,

外国投資信託に係る信託契約に基づく受益権であるところ,

外国投資信託は,外国において外国の法令に基づいて設定された信託で,

投資信託に類するものであり(投資信託及び投資法人に関する法律2条22項),

上記投資信託受益権の内容は,必ずしも明らかではない。

 

しかし,外国投資信託が同法に基づき設定される

投資信託に類するものであることからすれば,

上記投資信託受益権についても,委託者指図型投資信託に係る

信託契約に基づく受益権と同様,相続開始と同時に

当然に相続分に応じて分割されることはないものとする余地が

十分にあるというべきである。

 

本件国債は,個人向け国債の発行等に関する

省令2条に規定する個人向け国債であるところ,

個人向け国債の額面金額の最低額は1万円とされ,

その権利の帰属を定めることとなる社債,株式等の

振替に関する法律の規定による振替口座簿の記載又は記録は,

上記最低額の整数倍の金額によるものとされており(同令3条),

取扱機関の買取りにより行われる個人向け国債の中途換金(同令6条)も,

上記金額を基準として行われるものと解される。

 

そうすると,個人向け国債は,法令上,

一定額をもって権利の単位が定められ,

1単位未満での権利行使が予定されていないものというべきであり,

このような個人向け国債の内容及び性質に照らせば,

共同相続された個人向け国債は,

相続開始と同時に当然に相続分に応じて

分割されることはないものというべきである。

 

以上のとおり,本件国債等は,亡Aの相続開始と同時に

当然に相続分に応じて分割されることがないものか,

又はそう解する余地があるものである。

 

そして,本件国債等が亡Aの相続開始と同時に

当然に相続分に応じて分割されるものでなければ,

その最終的な帰属は,遺産の分割によって

決せられるべきことになるから,

本件国債等は,本件遺産分割審判によって

上告人ら及び被上告人の各持分4分の1の割合による

準共有となったことになり,

上告人らの主位的請求に係る訴えは適法なものとなる。

 

全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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